第25章 果実が詰まった宝石箱
──第三者side
その夜。
“果実選びの達人”ことフードコーディネーターの春日寺文の家に、料理評論家・武木正徳が尋ねてきた。
「あぁ、武木さん……。明日の収録で使う果実ならもう箱に詰め終えましたよ!」
「ほう……」
「今回も全国から選りすぐりの絶品を取り寄せましたので……。ご安心を……」
笑顔でそう言う春日に、武木はズカズカと家の中に入って行った。
「ならばちと確認させてもらうぞ……」
「あ、いや……。いくら武木さんでも中身は見せられませんよ!そう言う約束だったじゃないですか!」
「案ずるな……。見たいのは箱の中身ではない……。鍵じゃよ!」
春日の家の倉庫に入り、武木は箱の鍵をチェックした。
春日は1人で倉庫にこもって果物を詰め、カムフラージュのためにレストランや業者に回す果実の箱も運び入れたため、配達業者にもバレることはないらしい。
「ならば外部に漏れるとしたら……お前の口からしかなさそうじゃのォ……」
武木は振り向きざまにそう凄んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
日売TV。
「おっ!禁断の果実の箱、届いたか……」
日売TVプロデューサー・樽岡利英がそう言った。報告して来たのは同じく日売TVのADである降谷渡だ。
「間違っても中を覗こうとしちゃダメよ!前回の収録前に武木さんに大目玉喰らったばかりだし……」
樽岡はそう軽口を叩く。降谷も「無理っスよ!もう別の鍵がかかってんスから……」と答える。
降谷がいなくなってから、その場にいたスタッフが怪訝な顔をした。
「またあの面倒な方法を?だったら武木さんが自分で詰めて鍵かけりゃいいのに……」
「自分も収録に食材を知って驚きたいからってさ!……まぁあの人ももう年だし……実は後釜の審査員に当たりを付けちゃってるんだけどね……」