第25章 果実が詰まった宝石箱
ギャラリーがザワザワとする。
箱を私が開けると、今日のフルーツの他に──
「た、武木さん!?」
武木さんが今日のフルーツであるリンゴに埋もれて入っていた。
私は箱の蓋を開きっ放しにしておき、武木さんの状態を見た。
すぐにコナン君と世良さんが降りて来て、私に武木さんの状態を訊いて来た。
「どうだ?」
世良さんに訊かれ、私は首を横に振った。
「ダメだわ……完全に冷たくなってる……。死因は後頭部の傷で、遺体の硬直具合から見て死後半日以上は経ってると思う……」
と、コナン君が「ん?」と何かに気づいたようなそぶりを見せた。
「どうしたの?……あ」
コナン君が見ている箱の縁に、血を拭き取ったような跡がついている。しかもこの跡は内側にもついている。ということは──
「箱の蓋が開いてる時、そこに頭をぶつけて亡くなり……そのまま箱の中にリンゴと一緒に詰められたんだろーね……」
と、箱のそばに立っていた剣崎さんがかがんで驚いたように訊いて来た。
「ほ、本当に武木さん亡くなってるのか?」
「ええ……。私、警察に電話してきますね……」
私は一旦スタジオを出て、携帯で目暮警部に電話した。
「あ、もしもし目暮警部ですか?瀬里奈です……。実は──」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
程なくして警察が到着し、現場検証が行われた。
「なるほど……では瀬里奈君が電話で言っていた通り……番組の料理対決で使う果実が入ったこの箱の中に……番組の審査員長である武木正徳さんの遺体が入れられてたわけか……」
目暮警部が箱の前にかがんで言った。私も頷く。
「武木さん……ずっと連絡が取れなかったんですけど……まさか箱の中に入れられていたなんて……」
「審査員長が不在なのに番組の収録を始めたのかね?」
「ええ、でも──」
私が話そうとすると、目暮警部の後ろから自信満々の笑みで小五郎さんが出て来た。
「彼の代役としてたまたま番組のギャラリーで来ていた私めに白羽の矢が立てられたからでありますよ!警部殿!」
「何で君が?美食家でもないだろうに……」