第25章 果実が詰まった宝石箱
「なーにアンタ?チャンピオンがズルしてるって言いたいわけ?」
園子ちゃんがコナン君に噛み付いた。「お姉様からも何とか言ってやってくださいよ!」今度は私にすがりついて来る。
「私は何とも言えないかな……。剣崎さんが箱の鍵を開けてくれるまで私もフルーツ知らないし……」
それに、毎回番組冒頭で開ける、あの古めかしい鉄の箱にはちょっとした仕掛けがある。
そう伝えると、コナン君は不思議そうな顔をした。
「仕掛け?」
そんなコナン君に私は自信満々に頷いた。
「そ!その箱に毎回“果実選びの達人”がお題のフルーツをたっぷり詰めるんだけど……。詰めた後で一旦その箱に鍵をかけてTV局に送って、箱を受け取った番組ディレクターがさらに別の鍵をかけて達人の元へ送り返し……そして達人が自分の鍵を開けて再びTV局に送ったその箱を……番組冒頭でプロデューサーから鍵を授かった司会者が開けて、初めてお題のフルーツが分かるんだもの……」
そう言うと、世良さんがニヤッと笑った。
「なるほど?昔の暗号だね……」
「あ、暗号?」
園子ちゃんが怪訝な顔をする。
世良さん曰く、今みたいに通信機器が発達していない昔は、そうやって秘密文書をやりとりしていたとか。
その方法なら、鍵を持っている本人同士しか中身は見られないし、それを途中で運んでいる人がこっそり覗こうにも覗けないから。
「それより目立たなくするにはどうすればいいんだ?」
世良さんが2人に訊いた。
ギャラリーは女性が多いし、女性らしい格好をすれば少しは目立ちにくいのでは……。と2人に言われ、世良さんは「女の子っぽいか……」と考え込むそぶりを見せた。
「そーいえば、お姉さんも収録の時にはドレスとか着てますよね?」
「そりゃ……衣装だし。それに、番組の雰囲気上ドレスとか綺麗めの服の方が合うのよ……」
私は苦笑いしてそう言った。「じゃあ、私こっちだから」そう言って私は大学への近道を行った。