第5章 突然の遭遇──
無邪気に笑うコナン君を見て、蘭ちゃんがホッとしたような顔をした。
「どうしたの?」
「お姉さん。いえ、心配して損しちゃったなーって」
「心配?」
「だって普段のコナン君って妙にクールで子供っぽくないんですもん……」
蘭ちゃんの呟きに私は苦笑いした。
「あんな無邪気な顔を見るとホッとしちゃうんです……やっぱり子供なんだなーって……」
「へぇ」
「でもホント、コナン君てあいつに似てますよね」
「あいつ?」
小五郎さんが話に入ってきた。蘭ちゃんが小五郎さんを促す。
「ホラ、あいつよあいつ……。キザでカッコつけで……」
新一に対する蘭ちゃんの評価が面白くて、ついクスッと笑いが漏れる。
そこへ、知らない声が割り込んでくる。
「推理マニアでホームズフリーク……音痴やがサッカーの腕は超高校級……。そして先日のオレとの勝負、挨拶もなしに勝ち逃げしよった……」
……ん?何でそこまで?てゆーかこの声誰?
「工藤新一のことやろ?」
「は、服部君!?」
蘭ちゃんが驚いたような顔をした。私は面識がないので、きょとんと首をかしげる。
「蘭ちゃん……誰?」
「あ、そっか!お姉さんはあの時いなかったんだ……。彼は西の名探偵、服部平次君です!新一のライバルみたいで……」
「へえ?西の名探偵、ね……」
私はじっと彼を見つめた。
「何や姉ちゃん、照れるやんか」
「あなたもホームズファンなの?」
平次君の冗談もさらりとかわして質問する。平次君は手を振って否定した。
「ちゃうちゃう、このツアーに応募したんは、工藤に会えるかもしれんと思ったからや!それにオレはコナン・ドイルよりエラリィ・クイーンの方が……」
そこまで言った途端、他のツアー参加者にじろっと睨まれる。
「でもやっぱり1番はドイルやな……」と意見を翻していた。
と、オーナーがパンパンと手を叩いてみんなの目を注目させた。
「では全員揃った所で、このツアーの説明をしましょう!今日はもう遅いのでお休みになって、朝9時に朝食、1時に昼食、8時に夕食……。そして、夕食後には毎年恒例になっている超難問推理クイズを……。そしてそして、そのクイズで見事満点を取られた方にはなんと……」
オーナーが一呼吸おいた。
「シャーロック・ホームズがこの世に生を受けたコナン・ドイルの出世作……『緋色の研究』の初版本を進呈致しましょう!」