第24章 甘く冷たい宅急便──悪夢
兄さんは私の頭をくしゃりと撫で、すぐにその場を去って行った。
普通なら嬉しく思うのだろうが──私は、顔を青白くさせ、ぎゅっと自分の肩を抱きしめた。
「……瀬里奈さん」
「……あ、はい……」
「頬、怪我してますけどいいんですか?絆創膏持ってるので、貼りましょう」
どうやら私が呆然としている間に犯人達を縛り付けたらしい。相変わらず仕事が早いことだ。
ほっぺにペタッと絆創膏を貼られ、私は少しだけ痛みに顔をしかめた。
「……高校の時もこんなことあった気がする」
「僕もまたあんなことが起きるとは思いませんでしたよ」
そう言って2人で苦笑い。
私は子供達をコンテナから出すと、子供達から「一緒にケーキ食べる?」と訊かれた。
「私?いいけど……」
そう言って私は博士の家に入ったが──
「……ありゃりゃ」
ケーキはぐちゃぐちゃ。
「何でこんなことになってんの?」と小声で近くのコナン君に訊く。「あいつら、覚えてもらうためにワザと荷物を落とすとか言ってたからな……」
それで何となく合点がいった。
冷蔵のコンテナに入れておけば、死亡推定時刻は遅くなり、その時間に2人は仕事をしていたというアリバイになる。アリバイを確実な物にするために、配達先の人の前で荷物を落とし、顔を覚えてもらったのだろう。
「あのー、博士?」
「ん?何じゃ瀬里奈君……」
「どうせだからウチに来ます?ウチなら材料もあるし、ケーキくらいなら作れますよ?」
そう言って提案すると、子供達は「さんせーい!」と元気よく言ってくれた。
というわけで崩れてしまったケーキと博士の揚げてくれたドーナツを持って私の家へ。
「じゃあちょっと待っててね。──昴さーん、桂羅兄!手伝ってー」
私は上の方に向かって声をかけた。すぐに降りて来たのは桂羅兄だ。
「すまんすまん、昴はんはちょい手が離せへんそうやから、オレが手伝うよ」
「助かる〜。じゃあこれ泡立てて?泡立て器で出来るはずだから」
「ラジャ」
工藤邸にいる見知らぬ男を見て、子供達はおろか、博士やコナン君もきょとんとしていた。
「……何?」