第23章 服部平次と吸血鬼館
──瀬里奈side
「く、くそ……か、体がつかえて……」
間に合った。
私はほっと息をついた。
「当たり前や……。そら旦那さんがひかるさんのために作らした隠し通路や!あんたの体に会うわけないやろ?羽川条平さん?」
平次君の言葉に私はクスッと笑った。
「旦那様がひかるさんに服をプレゼントしてらしたんなら……体のサイズをひかるさんに聞いて知ってらしたはずだし、ね?」
そして羽川さんの後ろから腕時計型ライトで彼を照らすコナン君が言う。
「そう……。今夜の惨劇はひかるさんに託した連続殺人……。そのトリックの全容を今朝、旦那様がメールで彼女を南蛮部屋に呼んで伝えようとしてたのを、あんたが横取りしたんだろ?」
「洗面所で充電中やったひかるさんの携帯に来た旦那さんのメールを……あんたが勝手に見たんは分かってんねん!ひかるさんは昼過ぎまでそのメールに気づいてへんかったみたいやしな……」
平次君もそう言った。
羽川さんは驚きと焦りが混じる。
「な、何で俺だって……。昼前に来た岸治さんにも見るチャンスはあったじゃねーか!?」
そう言う羽川さんに、平次君は呆れたような半眼を向けた。
「メールの内容は『朝食後に南蛮部屋に来てくれ』やねんで?昼前にそないなメール見てももう旦那さんは待ってへんと思うやろ?そのメールが未読やったとしても、2人がどっかで偶然会うて話は済んでもうたか……すっぽかされた旦那さんが諦めて寝てしもたんちゃうかと思うぐらいや……」
私もスカートが地面につかないようにして平次君の横にしゃがんだ。
「そのメールを見て南蛮部屋に行くのは、前の日に泊まりに来てたあなたと守与さんの2人だけ。その内守与さんは殺されちゃったから、消去法で羽川さん、ってわけ!」
執事の人やメイドさんが見たって可能性もあるけど、そんな大事なことを旦那様がメールで伝えようとしていたということは『この館に勝手に人のメールを読む不届き者はいない』と確信していたのだろう。
そして、何の話なのか気になった羽川さんは南蛮部屋にこっそり行って見てしまったのだ。
──旦那様が南蛮部屋のギロチンで自分の首をはねて死んでいたのを。