第23章 服部平次と吸血鬼館
「だって旦那様、ネットの通販で子供用のプールとかおもちゃの飛行機とか買ってらしたから、生まれてくる子供への贈り物だと思うじゃない!メイドになる前は私にもよく服とかプレゼントしてくださってたし……」
ちなみに、飛行機は羽ばたくヤツだったらしい(伝票にそう書いてあったとか)。
「でも昨夜の夜……あ、もう一昨日の夜か……。羽川様と一緒に来られた守与様におめでたのことをお訊きしたら……2人で『ないない』って笑ってらしたし……。昨日の昼前に来られた岸治様が大きなバッグをお持ちだったから、もしかして贈り物?って思ったけど……中身はカメラや現像の道具って言ってらしたし……。あなた達が来る少し前に来られた麻信様夫婦にも訊いたんだけど……『実那さん、羽川君とよりが戻ったのかしら?』って瑠莉さんが……」
「じゃあ実那さんにも訊いたの?」
コナン君が訊いた。
ひかるさんは苦笑いで答える。
「ええ……。君たちの少し後に来られたから……。ガン無視されちゃったけど……」
平次君が執事の古賀さんに尋ねる。
「よりが戻るっちゅうことは、羽川さんと実那さんは付きおうてたんか?」
「はい……。ですが熱烈な実那様の求婚が羽川様にはかなり負担だったようで、いつの間にか守与様と……」
「じゃあ、岸治さんと瑠莉さんは?」
今度は私が訊いた。
「お2人はもともと婚約なさっていたんですが……陽子様のあの事故死の後、岸治様がひどく落ち込まれて……。婚約は破談となり、瑠莉様は麻信様に見初められてご結婚を……」
「へぇ……」
「どうやら岸治様は旦那様の婚約者だった陽子様のことが本当にお好きだったようでございます……。陽子様の葬儀の日、旦那様よりも泣いてらしたので……」
私は『陽子様の事故死』の話を知らないため、近くにいたコナン君に尋ねた。
「ねぇ新一……。『陽子様の事故死』って何?」
「ああそうか、瀬里奈は知らねーんだったな……」
話を聞くと、陽子様の事故は嵐の夜だったそう。
館で旦那様の帰りを待っていた陽子様は、突然『旦那様の病院へ車で向かう』と言って館を飛び出したらしい。執事さんは危ないから、と止めたらしいのだが、途中の山道のガードレールを突き破って車ごと崖下に転落したとか。
旦那様からの電話の内容を清水さんから聞いた後、館を飛び出したということだが──