第23章 服部平次と吸血鬼館
「電話の内容は?」
「『娘さんの手術は無事成功したと陽子様に伝えてくれ』とか何とか言ってたらしいぜ……」
「車って陽子様のだったの?」
「いや?麻信さんの車で、みんなこの館に集まってたらしいけどな……」
「……うわあ」
私は思わず顔をしかめた。
いかにも、なシチュエーションだ。
事故の話を聞き終わり、私はふぅ、と頭の中で寅倉家の関係を整理した。
羽川さんと実那さんはお付き合いしてたけど、いつの間にか守与さんと羽川さんが付き合い始めた……。
瑠莉さんは岸治さんと婚約してたけど、陽子様の事故死をきっかけに婚約は破談、瑠莉さんと麻信さんが結婚か……。
「……ドロッドロ」
私は思わず呟いた。
と、ひかるさんの携帯が鳴った。
「あ、岸治さんからメール……。部屋にお酒を持って来てくれって……」
「あの人、あなたのメルアド知ってるんですか?」
平次君が不思議そうに訊いた。
ひかるさんはこの前、旦那様からみんなのメルアドを教えてもらったらしい。きっと『皆さんが来られる前に挨拶しておきなさい』ってことだろうと思い、メールを送ったという。
「私、旦那様とよくメールしてるので……。『おはようございます』とか『おやすみなさい』とか……」
「ほんなら『南蛮部屋に来い』って言われたんも……」
「ええ……。メールで!ホラ……」
ひかるさんは旦那様から貰ったメールを見せてくれた。
『題名:大事な話
朝食後、
誰にも言わずに
南蛮部屋に
来ておくれ。
くれぐれも執事には
気取られぬように。──寅倉迫弥』
でも、ひかるさんはこのメールを見たのがお昼過ぎ(洗面所で充電をしていたのをすっかり忘れていたとか)で、部屋が分からないということもあって旦那様と会うのをすっぽかしてしまったらしい。
と、またひかるさんの携帯が鳴った。
「わっ!岸治さんから催促のメール!私、行ってきますね!」
ひかるさんは慌てて食堂を出て行った。
「メールの文面からすると……」
「とても旦那さんに嫌われてるようには見えへんのォ……」
コナン君と平次君がそう言う。
話を聞くと、旦那様は執事の古賀さんにひかるさんのことを悪く言っていたらしい。