第23章 服部平次と吸血鬼館
「すいませーん……ひかるさんいます?」
蘭ちゃん達がこの食堂へ来た。
餃子を作り過ぎて、冷凍保存をしたいから冷凍庫の鍵をひかるさんに借りに来たらしい。
「はい、これです……」
「ありがとォ!蘭ちゃん、行こ!」
和葉ちゃんが蘭ちゃんと一緒に食堂を出る。
と、ひかるさんが「紅茶を淹れ直して来ますね」と言って部屋を出た。
「あ、じゃあ私も手伝いますよ!」
そう言って私もひかるさんについて行った。
まさかその後ろを誰かが付いて来ているとも知らずに──
厨房に着き、私は物凄い形相で蘭ちゃん達の方に向かうひかるさんをスルーし、紅茶のポットやカップ、ミルクや砂糖を用意した。
案の定、きゃあああ!と悲鳴を上げる蘭ちゃんと和葉ちゃん。私はひかるさんを軽くたしなめた。
「ひかるさん……2人とも怖がってるって」
だが私の言葉にも耳を貸さず、ガツガツと頬張るひかるさん。
悲鳴を聞きつけたのか、ダッシュでこちらへ来た平次君とコナン君に私は苦笑いを向けた。
「平気よ2人共……」
だってひかるさんは──
「餃子食べてるだけだから……」
「餃子……?」
2人は目を点にさせた。
「ひかるさん、ずっとご飯食べれてなかったから、お腹空いてたらしいのよ……。餃子の匂い嗅いだら我慢出来なくなったのね……」
私は苦笑いを浮かべつつ餃子を1つつまんだ。
うん、美味い←
「そ、それで?冷凍庫の中見た?」
コナン君が言うと、蘭ちゃんと和葉ちゃんはこくっと頷いた。
「う、うん……」
「何やけったいな物入ってたよ……」
冷凍庫の中に入っていたのは海苔の缶。海苔が湿気るのを防ぐために冷蔵庫に入れはするけど、缶ごとは入れない……。
しかも入っていたのはその海苔の缶だけ。その上も冷凍庫で、鍵はかかっていなかったらしいけど、食材でパンパン。
「この冷凍庫の鍵を持ってたのってひかるさんだけ?」
コナン君が訊いた。
「旦那様も持ってると思うけど……」
彼女が持っているのは厨房とその周りの部屋の鍵。後は他のメイドやシェフが分担しているらしい。
「あのー……みなさんまだ起きてますよねぇ?」
「せやったら厨房に呼んで来てくれへん?夜食に餃子ご馳走するで!」
蘭ちゃんと和葉ちゃんがそう言うが、ひかるさんの表情は浮かなかった。