第23章 服部平次と吸血鬼館
それを聞いたひかるさんが口を開いた。
「あ、でもあの……きゅ、吸血鬼とは……あまり被ってないですよね?」
「知らないんですか?ドラキュラ伯爵のモデルになったワラキア公ヴラド三世は反逆者を尽く串刺しにして……『串刺し公』って呼ばれてたんですよ?」
私がそう言うと、ひかるさんは「そ、そうなんですか?」と驚いた顔をした。
ヴラド三世の父親が竜公・ドラクルと呼ばれており、その息子だからドラキュラと名乗っていたらしい。
「話のついでにご覧になりますか?南蛮部屋を……」
「な、南蛮部屋?」
嫌な予感がしつつも、私はみんなについて行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「なるほど……。その殿様が南蛮から買うた拷問器具をこの部屋に保管しとるっちゅうわけか……」
ギロチンなど幅広い拷問器具を取り揃えてある。
「そっか!この部屋だったのね!」
ひかるさんがいきなり声を上げた。
「ホラ今朝、旦那様に呼ばれたんだけど……わたし、この南蛮部屋がどこだか分かんなくて……」
彼女は誰にも言わずに南蛮部屋に来てくれ、と頼まれたし、執事さんには気づかれないようにと念を押されていたため、誰にも聞けなかったらしい。
ちなみに旦那様を捜した時、この部屋も捜したらしい。
食堂に戻り、私とひかるさん、残っている寅倉家の人達は食堂に集まっていた。
「ええかあんたら!オレらが戻って来るまであんたら4人!この食堂から出たらアカンで!またバラバラに動かれて誰かが吸血鬼に襲われたらかなんしな!便所に行きとーなったら……男2人、女2人で連れションせぇよ!」
何かあったら私かひかるさんがコナン君達に電話をすることになり、彼らは部屋の外に出た。
「ねぇ……初めて見た時から思ってたけど……あなた、歌手の瀬里奈でしょ?」
実那さんに訊かれ、私はぎょっとした。
「な……」
「えっ、瀬里奈!?すごい、私ファンなんです!」
ひかるさんがパッと顔を華やがせた。
「さっ、サイン!サイン下さい!」
「え……この事件が落ち着いたら……ですけといいですか?」
そう答えるのが精一杯だった。