第23章 服部平次と吸血鬼館
「ああ……。近頃の旦那様は陽を避けるように昼間はずっと部屋で寝てらしたり……愛用なさってた銀の食器類も、自分は銀アレルギーだと急に言い出されて全てお捨てになったり……先日は好物のニンニクの入ったスープの皿を叩き割られて、『血が腐るから2度と入れるな』と大層ご立腹で……」
おいおいおい、それってまるで──
「ええ……メイドの清水さんの目にはそう映ったんでしょう……。まるで吸血鬼……ヴァンパイアのようだと……」
「「ヴァ……ヴァンパイア!?」」
いつの間にか戻ってきていたらしい蘭ちゃんと和葉ちゃんが声を揃えて言った。
平次君がうまく2人に吸血鬼の話をごまかし、全員で館内に入った。
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「わぁ……ザ・ヨーロピアン?」
私は頭にクエスチョンマークを浮かべながら言った。
何というか、ハ○ー・ポッ○ーの学校の食堂的な感じだ。
「誰よ?あんたら……」
「え?」
目つきは鋭いが、美人な女の人が入って来た。
「まさかあんた、お義兄様の隠し子とかじゃないでしょうね!?」
怖い顔でそう言う女の人は寅倉瑠莉さん。
「そんなわけないだろ?もしそうなら兄さんが僕達をここに呼ぶわけないし……」
後ろから出て来た、眼鏡をかけたおじさんは寅倉麻信さん。瑠莉さんは麻信さんの妻らしい。
「そうね……。もし本当に隠し子なら……迫弥の遺産は私達兄弟じゃなく、子供に全額相続されちゃうんだから……」
その後ろから出て来た厚化粧のおばさん(でも年的にはおばあさん)は寅倉守与さん。
「でも分かんないっスよォ?」
チャラチャラした物言いをするのは羽川条平さん。守代さんの恋人らしい。
「何年か前に急に連れて来たじゃんよ!年の離れた子連れで美人の婚約者を……。隠し子が2、3人いてもおかしくないんじゃね?」
ニヤニヤと嫌な笑い方をする羽川さん。
「でもその婚約者、運悪くすぐに死んじまったけど……。あ、そっか!あんたらにとっては運良くか?」
そんな羽川さんの襟首を引っ掴んだのは寅倉家三男の寅倉岸治さん。
「テメェ……今度そんな口叩きやがったらただじゃおかねぇぞ!」
「な、何だよ!?あんただって本当はラッキーだって思ってんだろ?あのまま結婚されて今も生きてたら遺産もらえねぇし……。あ、何?もしかしてあんた……あの子連れの愛人にガチで横恋慕してたとか?」