第23章 服部平次と吸血鬼館
「そ、それは堪忍や……」
「じゃ、遠慮なく♪」
そんな話がひと段落し、私はカバンから台本を取り出した。もう覚えてはいるけど、読み込んでおかなければならないから。
その隣では大滝警部が「吸われん吸われん……」と、ボソボソと呟いている。
と、後ろから──
「何を吸われるっちゅうねん?さっきから『吸われん吸われん』ってボソボソ言ってるけど……」
「へ、平ちゃん!?」
ありゃ、バレちゃった。
私は軽くため息をついた。
「まさか女の唇のこととちゃうやろな?」
「平次君、気色悪いからやめて」
「そらそやな……って、いつの間に車に!?」
大滝警部が私の言葉にノリツッコミをする。
「大滝警部がさっきガソリンスタンドでトイレに行った隙にこっそり……」
コナン君もニコニコしながらしれっと言った。
「瀬里奈姉ちゃんは気づいてたよね?」
「え、ええ……。そりゃ私が乗ってる時に他の人が乗って来たら気づくでしょ……」
それに、小五郎さん達もレンタカーでこの車を尾行して来ている。普通に考えれば気づくはずだ。
「け、けど何で……」
「そら大滝ハンがコソコソ会いに行く女の顔を拝みにや!けどまさかこっちに女がおるとは思わへんかったけど……。まさか、この姉ちゃんが女とちゃうやろな?」
「はっあぁ!?」
驚きすぎて物凄い変な声が出た。
「何で私!?」
「せやかて、2人で何やコソコソとしとるやんけ。大滝ハンと新婚旅行でっか〜?」
「んなわけないでしょ!私は大滝警部に付いてきただけで……」
「じゃあ教えてくれる?」
コナン君がニッコリ笑ってそう言った。
「どんな事件なの?」
「事件なんやろ?オレに内緒っちゅうことは親父絡みとちゃうか?」
そこまで追い詰められると、やっと大滝警部は話し始めた。