第23章 服部平次と吸血鬼館
「はい、OK!これで撮影は終了だよ!お疲れ瀬里奈ちゃん!」
「ありがとうございます!お疲れ様でしたー!」
私はぺこっとお辞儀をしてスタジオを出た。
今日は映画のポスターの撮影。なぜか女優業にも手を出すことになってしまい、今はかなり多忙だ。
「あー、つっかれたぁ……」
ぐーっと背伸びをしながら歩いていると──「きゃ!?」誰かにぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい!大丈夫でしたか?」
私は慌ててその人に謝る。ふと、顔を上げてぶつかった人を見ると──
「……あれ、大滝警部?でしたっけ?」
「ん?あんた確か……」
「あ、工藤瀬里奈です。覚えてませんか?」
私はキャスケットと黒縁眼鏡を外した。
「京都の事件でお世話に……」
「ああ、あの時の!いやぁ、最近よぉTVに出てはるから、見間違いかと……」
「えー!?ひどいですよ……。でも何でわざわざ東京に?」
小首を傾げて訊くと、大滝警部は困ったように笑った。
「ああ、ちょっと事件があってな……。まだこっちにも野暮用があるさかい、ワシは残っとるんや……」
「へぇ……じゃあその野暮用、私も付いてっていいですか?」
しれっとそう言い、大滝警部の言葉も聞かずに車に乗り込んだ。
「で?大滝警部が来てるってことは平次君達も付いて来てるんでしょ?あの子達を撒いてまで1人で行こうとする場所ってどこです?どうせ本部長絡みでしょうけど」
シートベルトをしっかり締め、行く気満々の私に大滝警部は諦めたようなため息をついた。
「場所は群馬と埼玉の県境……。山奥に立つ洋館や……。そこで今日の夜、遺産相続の会議があるそうなんやが……それに出席してくれって本部長に頼まれたんや……」
依頼人の話だと、被相続人のその館の主人の様子がすごく異様で、不安だからということで警察関係者にその話し合いに同席してほしいということらしい。
半年前にその館の近くの森で殺しがあって、妙な噂も立っているらしいが──
「うわぁ、何かやだなぁ……」
「せやろ?やから早よ降りた方が……」
「東京出てから言うセリフですかそれ?こんな所で放置されたら私、大阪府警に電話しますよ?」