第22章 怪盗キッドと赤面の人魚(ブラッシュマーメイド)
今回の警備は万全らしいが──そう上手く行くだろうか?私は何とも言えない不安を抱えながら予告時間を待った。
すると──
「え?──きゃあ!?」
カーペットがいきなり吊り上がった。
私と園子ちゃん、世良さんを巻き込み、さらには中森のおじ様、小五郎さんや水槽の周りに固めてあった警備員さんも巻き込み、カーペットで水槽を目隠しされる。
そしてキッドの声がする。
《Three(3)……Tow(2)……One(1)……》
ポンッという音を合図にカーペットを吊っていた糸が切れ、私達はカーペットごと床に放り出された。
なぜか私は世良さんに抱えられていたため、衝撃は少ない。
「世良さん、ごめん!重かったでしょ?」
「い、いやボクは平気さ……。それより宝石は!?」
みんなが水槽を見る。
だが水槽の中には──
「どこにも……いないよ?」
宝石のついたあの亀はいなかった。
「あ、でも水槽の中に……カード……?」
カードに書いてあった言葉は──
「『シャイな人魚は泡となって
我が掌中に消えました ──怪盗キッド』」
そして鈴木相談役が水槽の金網のロックを解除し、脚立に登って水槽の中を調べた。
だが──
「だ、駄目じゃ……どこにもおらぬわ……」
今回はかなりあっさりとしてるな……。私は不思議に思って鈴木相談役を見ていた。
「でも、やられすぎなんじゃないか?」
世良さんが不思議そうに言った。
数日前、カーペットにコーラをぶちまけた客がいたから、カーペットを張り替えたそうなのだが、やって来た内装業者がカーペットの色に合う照明と交換しないか、と持ちかけて来たのだそう。
ちょうど水槽を展示するスペースを確保するために、この部屋の美術品を別室に移動させている所だったから、模様替えもいいかと思いその案に乗ったらしいのだが──
「今思えば内装業者のあの2人組……もしかしたら……」
その言葉に中森のおじ様が噛み付く。だが鈴木相談役は「今回は儂らの負け!撤収じゃ!」と実にあっさり身を引こうとした。
そんな彼の頬を思い切り抓る世良さん。
世良さんは『キッドが亀ごと宝石を盗ったとしたら、まだこの中にいるはず』と言い、数人で組になってボディチェックをし合うということになった。