第22章 怪盗キッドと赤面の人魚(ブラッシュマーメイド)
「……あ、中森のおじ様!」
「ん?瀬里奈ちゃん!?何でここに……」
スピーカーで大声を出していたのは、快斗のガールフレンド・青子ちゃんの父親である中森銀三さん。
「えへへ、何かキッドと仲がいいって噂らしくて。鈴木相談役に招待されたんです」
ついでにここの宣伝もっていうのは伏せておく。何か面倒なことになりそうだし。
関係者以外が出払った所で、私は帽子と変装用の伊達眼鏡を外した。
「よくバレませんよね、そんな変装で……」
蘭ちゃんに言われ、私はふふっと笑った。
「ええ、このくらいの方が怪しまれないしね……」
あんまり重装備だと、『あの人誰だ?』ってなって逆に目立つし。
と、中森のおじ様が世良さんのほっぺをいきなり抓った。
「おいボウズ!聞こえなかったか!?関係者以外は出てけって言っただろ!?」
蘭ちゃんと園子ちゃんが慌てて世良さんを庇う。
「あ、違うんです中森警部!世良さんはウチの高校の……」
「だいいちボウズって?」
中森のおじ様は世良さんを男の子だと思っているらしく、世良さんはそんな反応にも慣れっこのよう。だが──
「まぁ仕方ないさ!ボクは今日初めて警部さんと会ったわけだし……。それにホオを抓ったのは……キッドの変装かどうか確かめるためだろうし……ね!」
世良さんは思い切りおじ様に金的を喰らわせた。いわゆる股間蹴りだ。さすが截拳道。←
思い切り青い顔をして痛がるおじ様に世良さんはニコニコと笑って言った。
「脂汗をかいてるってことは警部も変装じゃないみたいだね!」
すごい確かめ方だ。
そしてなぜか小五郎さんも来て、中森のおじ様は青白い顔をしながら不機嫌そうに顔をしかめた。
「んじゃ、予告の8時まであと30分だからトイレ済ませてくるよ!」
そう言って世良さんがその場を離れる。
「あ、近くのトイレ混んでたから……2階のを使った方がいいかもー!」
園子ちゃんがそう声をかける。
どうやらこの館内を回っていた時にトイレに行っていたらしい。
8時まであと少しとなった所。
外ではキッドコールが止まず、館内にまで響いて来ていた。
「キッド登場まであと何分?」
園子ちゃんが蘭ちゃんに訊く。
蘭ちゃんが携帯を開くが、「あれ?」と言った顔をして私達から離れた。
「……?」