第5章 突然の遭遇──
「で、今度はオメーの番だよ。何に反応したんだよ?」
コナン君の怪しむような視線に、私は目を泳がせた。
「……っ、な、内緒!」
「おいおい、弟のオレに隠し事かよ?」
「10年前からの、でしょ!」
呆れたような顔をするコナン君に私は茶化して答えをはぐらかした。
「あ、ホラもう2人とも行っちゃってる!行こ、“コナン君”」
「う、うん“瀬里奈”姉ちゃん!」
クロークに荷物を預けるため、列に並ぶ。だが、かなりの行列でなかなか前に進まなかった。
そこに──
「毛利さん……ですよね?」
ゲームを企画した満天堂の中島秀明さん、そして彼の同僚である上田光司さん、竹下裕信さんが姿を現した。どうやら中島さんを中心に何か問題があるらしい。
私はにっこり笑って、コナン君に話しかけた。
「気になる?コナン君」
「え?あ、まぁね……」
ちょうど小五郎さんの荷物を預けた時、竹下さんが、
「お、おい!もうこんな時間だぞ!!」
と騒いだ。そして上田さん、竹下さんが私達4人の前に割り込んでクロークに荷物を預けた。
「はた迷惑な人たち……」
私はボソッと愚痴をこぼす。それをコナン君と蘭ちゃんが「まぁまぁ……」と宥めた。
「でもみんな同じカバンなのね」
「ほんとだー……」
私がそう言うと、蘭ちゃんも気づいたらしく、3人のカバンを眺めた。
3人には『一般の人に少しでも満天堂を印象付けようという社長のアイデア』だの、『みんな同じものを使っているから間違えやすい』だの、『今でも持ち歩いているのは社長くらい』だのと散々な言われようだったが、社長が来てからはコソコソとし始め、最終的には社長の一声でピューっと退散していった。
そして蘭ちゃんとコナン君と3人でいろんなゲームを体験したり見学したりしているうちに、コナン君お得意の「ボクちょっとトイレ」が炸裂、社員の中島さんも一緒に付いて行くこととなった。
「あ、ごめんなさい……私も一緒に行っていいですか?場所分かんなくて……」
私もそう言って2人と一緒にトイレに向かった。
そこで──
ドンッ。
中島さんが強面の大男とぶつかってしまった。
「でっけー男……」
コナン君はそう呟いていたが、私はきゅっと唇を噛み締めたまま大男を睨み付けていた。
大男は黒い帽子に黒いスーツという、まさに黒ずくめだったから。