第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「すでに列車内で殺人が起きた上に行方不明者も出たとなると……下車する際に全乗客の荷物は入念なチェックを受けるのは必至……いくら私達でも遺体を持ち去れず放置せざるを得ないから……」
その点、元の姿に戻って殺されたとしても、子供達にとっては一度会っただけの女性の遺体。姿を消した彼女の方が心配でそれどころじゃなくなり、組織の視界から外れる可能性もある。
ベルモットはそう話した。
まぁ、阿笠博士やコナンはそうは思わないかもしれないが、まさかその女性の遺体が幼児化する前の彼女の遺体だなんて言えるわけもない。
「そう……貴方はきっと彼女ならそう出ると予想して薬を飲む前に彼女を保護し、元の彼女の姿に変装した貴方が我々の前に姿を現し、殺されたフリでもして組織の目を欺く算段だったって所かしら?
この列車に私達が乗り込む情報をどうやって貴方が入手したかは知らないけど……この貴方の部屋に彼女が匿われていないってことは……どうやらまだ彼女を保護できていないようね……」
拳銃で脅されながら、後ろにジリジリと追い詰められる。
「な、何言ってるの?さっきシャロンが窓から捨てた私のトランク……な、中身見たでしょ?あの中に変装道具なんて入ってた?」
「悪いわね……トランクの前に処分させてもらったわ……」
そしてベルモットは洗面台の扉に手をかけ、扉をバッと勢いよく開けた。
「この洗面台の中に隠してあった変装道具も!血糊の仕掛け付きの防弾ジャケットもね!」
有希子は冷や汗を浮かべた。
「で、でもシャロンもまだあの子を見つけてないなら、まだ五分五分じゃない……」
「No problem……(ご心配なく……)
彼女を炙り出す準備なら……もう整ってるわ……」
ピッ、とベルモットが何かのスイッチを入れた。と、1等車のB室にある円筒から煙が出る。
──瀬里奈side
「だから、私は……私は……」
安東さんが泣きながらそう言っている時、B室から煙が出た。
安室さんが部屋を覗き込み、叫んだ。
「か、火事!?火事だ!皆さん前の車両に避難してください!」
な!?
私は慌てて小五郎さんを起こした。
「小五郎さん起きて!」
「おばあさん達も……早く!」
「車掌さんはこのことを……前の車両のお客さんに!」
わぁぁぁ、とみんなが逃げ惑う中、私とコナン君は残っていた。
「……」