第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
──第三者side
《緊急連絡です!只今、当列車の8号車で火災が発生いたしました!7号車と6号車のお客様は念のため……前の車両に避難していただきますようお願いします!》
ベルモットは外の様子をちらりと覗いてからドアを閉めた。
「思った通り……火元の客は全員火事恐怖症……彼らに急き立てられて大パニックよ……」
「みたいね……」
ベルモットは銃口を向けたまま言った。
「ここでクエスチョン!彼女ならこの状況でどこに行くと思う?」
「そりゃー前の車両に逃げるんじゃ……」
有希子がそう言うと、ベルモットはニヤッと笑った。
「いや、その逆……。彼女なら恐らく……」
その頃。
ハァ、ハァと煙が充満している8号車の中を走る女が1人。女──元の姿に戻った灰原はゴホゴホと咳をしている。
そんな彼女に声をかける人影が1人。
「さすがヘル・エンジェルの娘さんだ……。よく似てらっしゃる……」
煙の中から姿を現したのは──
「初めまして……。バーボン……これが僕のコードネームです……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「そう……彼女なら火元の8号車に向かうはず……。この煙が彼女を炙り出す私達の罠だと読んでね……」
「そっか!そのまま前の車両に逃げたらあなた達が待ち伏せてるから裏をかいたのね?」
有希子が両手を上げたままそう言う。だがベルモットはパタンとドアを閉め、「分かってないのね……」と小馬鹿にするような言い方をした。
「前の車両には彼女の友人達も避難してくるのよ?そんな所に命を狙われてる自分が行ったら巻き添えにしかねないからよ……。元の姿の彼女は子供達とも面識があるようだし……。
だから彼女はあえて火元へ向かうはず……たとえ私達がそれを見越して8号車で待ち構えていたとしても……1人で殺される方がマシだと考えて……」
と、有希子の携帯が鳴った。
電話の相手はコナンだ。
だが有希子の携帯をベルモットが奪い、有希子の声で電話に出た。
「あら新ちゃん、どうしたの?」
『母さんヤベェぞ!灰原がどこにもいねーんだ!母さんの所に行ってねぇか!?』
「こっちにも来てないわよ!前の車両に避難したんじゃない?人混みに紛れ込めば姿を隠しやすいし……」
『じゃあ前の車両に行ってみっから、母さんは作戦通りうまくやれよ!』
「OK♪」