第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
──瀬里奈side
「た、確かに6つです!他の部屋は鎖が5つなのに……このB室だけ切れた鎖を入れると6つになってます!」
「じゃあこれで……」
「密室は破れましたね……」
でも戸口で誰かがゴソゴソやっていたら車掌さんが気づくんじゃないか?という疑問が残る。
1等車の乗客と顔見知りである車掌さんが廊下にいるというのに、見られるリスクを負ってそんな犯行をする人はいないだろう。
「だがそのリスク……この音で解消されるとしたらどうですか?」
リンリン、リンリンと音が鳴る。これは呼び鈴の音だ。でも1等車の乗客は全員ここにいる。ならば誰が──
「ボクだよ!さっきB室のベルを鳴らして携帯に録音した音を再生したんだよ!車掌さんはこの音がしたのに、どの部屋のランプも点いてないからA室に行ったんだよね?」
「ああ……。A室のランプの電球が切れてて『呼んでるのに何で来ない?』って能登さんに怒られてたから……てっきり呼んでるのは能登さんだと思って……」
「それでA室の戸口で能登さんと車掌さんが言い争っている様子を、B室の室橋さんが扉を開けて覗いてたんでしょ?」
「あ、ああ……誰かと電話しながら……」
と、コナン君と車掌さんの話を聞いていた安室さんが「なるほど……」と言った。
「その時ですね?犯人がB室に入ったのは……。この列車の廊下は部屋の扉を開けたらほぼ塞がれるくらい狭い……。B室の扉が開いてたらその扉の向こうからやって来る犯人の姿は、ベルの音でA室の前に来させた車掌さんには見えませんから……」
恐らく犯人は、電話で室橋さんに『部屋の外が騒がしいけど何かあったのか?』とでも言ったのだろう。しかもそれはトンネル内での出来事。犯人は列車がトンネルに入る直前に室橋さんに電話し、部屋の外の様子を窺わせれば……。
たとえその最中に電話相手の犯人が部屋を出てB室に近づいて来ても、トンネルに入って通話出来なくなったから話の続きは部屋の中で、という状況にもなる。