第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
──瀬里奈side
「そう……密室殺人……。その謎は、出波さんのE室に2度目に訪れた時に解けました……」
そう言われた瞬間、出波さんが表情を変える。
「ちょっと何!?私が犯人だっていうわけ?」
「まだ犯人とは言ってませんって……」
私は出波さんを宥める。私がそう言うと、出波さんは少し大人しくなった。
「チェーンロックをかけた扉越しにあなたの部屋の中を見た時に気づいたんです……。チェーンロックがかかっていれば、どんなに覗き込んでも……片側のソファはほとんど見えないってね!
……なのにコナンがB室で遺体を見つけた時……チェーンロックがかかっているにも関わらず、右側のソファが見えたと言っている……。なぜだと思います?」
出波さんが「あ、あのボウヤが見間違えたんじゃないの?」と言うが、多分違う。恐らく──
「……チェーンロックの鎖が他の部屋より1つ多かったから……とか?そうすれば、その分扉の隙間が広がって、扉越しに見える範囲も広がるし……」
私は考え込みながらそう言った。能登さんが不思議そうに訊く。
「鎖が1つ増えたからって何か問題あるのかね?」
「大問題ですよ!」
安室さんが答えた。
「チェーンロックは通常かかった状態で外から手を入れても外せない、ギリギリの長さに設定されてますが……それが鎖1つ分長かったとしたら……部屋を出た後でも手を入れればロックをかけることはできますからね……」
──第三者side
車掌の座っていた席にあった名簿を覗き見る男。
それに車掌が気づいたのか、慌てて駆け寄って来た。
「すみません……。車内で知り合いを見かけたような気がしたので……確かめたくて……。失礼……」
車掌の椅子の下には、謎の筒。
男はこれから起きる事件を思い、ニヤリと笑ってその場を去った。