第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
《じゃあ次は19歳の誕生日に……。バイバイ、またね……。
あ、それと……そろそろあなたに言ってもいい頃かも……。実はお母さんね……今、とても恐ろしい薬を作ってるの……。ラボの仲間は夢のような薬って浮かれてるけど……父さんと母さんは願いを込めてこう呼んでるわ……。
シルバーブレッド……銀の弾丸ってね!
でもその薬を完成させるには、父さんと母さんはあなた達とお別れしなきゃいけないの……。分かってちょうだいね……志保……》
ごめん、お母さん……。私、分かってなかった……。
こんな薬……作っちゃいけなかったって……!
私は目に涙が溜まるのが分かった。そして目をぎゅっとつむり、薬を握りしめる。
でも……みんなを巻き添えにしないためにも……今はこの薬に頼るしか……
と、目の前の部屋のドアが開いた。そこに立っていたのは──
「さすがに姉妹だな……。行動が手に取るように分かる……」
沖矢昴さん──工藤邸に、瀬里奈さんと一緒に住んでいる男──
「さぁ……来てもらおうか……こちらのエリアに……」
私はたまらず彼の前から逃げた。
ダメ、今は……。
この姿で殺されるわけには……!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──瀬里奈side
「私も少し出て来ていいかな?」
哀ちゃんが出て行ってからしばらくした後、私はそう切り出した。いつまでも部屋にいても変わらないから。
「博士は万が一があった時の子供達の保護者として、お願いしますね」
ニコッとそう笑って私は部屋を出た。
「あ、そうだ蘭ちゃん」
「はい?」
「哀ちゃんなら、多分心配いらないと思うから……大丈夫よ」
「そう……ですか……」
蘭ちゃんはまだ腑に落ちないようだったが、一応頷いてはくれた。これで子供達や蘭ちゃん達が巻き込まれる恐れは無くなった──かな?
そして私は1等車で小五郎さん達を見つけた。
「小五郎さん、世良さん、コナン君も!調査の最中?」
「瀬里奈姉ちゃん?どうしてここに……」
コナン君が代表して質問する。私はニコッと笑った。
「調査の進展が気になってね。それに、何か嫌な感じがするし……」