第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「ねぇ、電気って言えばさー……何でA室の電球が切れてるのに交換しなかったの?」
コナンが車掌に訊いた。
「この1等車の後ろは貨物車で、いつもは予備の電球が置いてあるはずなのに見つからなかったんだ……」
「じゃあさ、発車前に色々探検するのって車掌さんなの?」
「ああ……。ちゃんと部屋の水が出るかとか2、3人で……。そういえば、この車掌の制服も1着なくなったとか言ってたなあ……」
と、コナンの携帯がマナーモードで鳴った。
どうやらメールだったらしく、彼はそれを見て表情を険しくする。
「ん?何か気になることでもあるのか?」
世良に覗き込まれ、コナンは慌てて画面を隠した。
「あ、ううん……。ボクも火事の記事見てたんだけど、まだ何も分からなくて……」
「まぁ、腹を据えてかかろうぜ?相手の方が焦ってるはずだから……。時速80㎞で走る列車の中に、逃げ場はどこにもないってね!」
「そ、そだね……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──灰原side
子供達や蘭さん達が会話をしている中、私は1人恐怖に怯えていた。
どうしよう……。
もしも本当に彼らが私を狙ってこの列車に乗り込んでいるのなら……私はもう……この場所にはいられない……。
と、私の携帯にメールが入った。
知らないアドレスだ。誰?
文面を見た瞬間、私は驚きと恐怖に呑み込まれた。
画面には──
『覚悟は決まった? ──Vermouth』
私は「トイレに行く」と言って部屋を出ようとした。と、私の手を掴む人物が1人。
「瀬里奈さん……?」
「哀ちゃん、大丈夫だから。私を信じて?もちろん、コナン君も……」
瀬里奈さんは私にそう耳打ちをした。
そしてスッと手を離す。
「瀬里奈お姉さん、哀ちゃんに何言ってたのー?」
「ん?哀ちゃんと私の内緒話だから、秘密♡」
吉田さんとのそんな会話を背中に聞きながら、私は部屋の外に出た。
私のいた部屋の死角になる曲がり角に隠れ、私は薬を入れたケースを取り出した。
思い出すのは、お母さんが私に遺してくれたビデオテープ。