第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「まぁ、とにかくだ……。亡くなった室橋さんのB室にはチェーンロックが掛かっていて……事件があった頃ずーっと廊下にいたこの車掌が、B室を出入りする不審人物を誰も見てないんなら……室橋さんの拳銃自殺で決まりなんじゃないのか?」
小五郎がそう言った。
だが腑に落ちない点はいくつもある。
こめかみの銃槍の周りに焦げ跡がないことや、遺体の向かいにあったソファには拳銃で撃った跡が付いていたこともそう、それに──
「あの室橋って人、蘭君達と部屋を入れ替えて推理クイズにノリノリで協力してたんだよ?そんな人が自殺なんてするかぁ?」
「その推理クイズの指示カードだって偽物みたいだし……」
世良とコナンが怪訝そうに反論する。
コナンが車掌に指示カードを見せた。いつもの指示カードとそっくりではあるが、内容は車掌達が聞いていたトリックとは違うらしい。
ということは──
(やっぱり……。誰かが何かの目的で室橋さんをこの1等車に移動させたんだ……。いつも室橋さんが予約していた1等車のB室におっちゃん達が割り込んで来たから……。
……となると、この車両でしか出来ないトリックなのか?)
コナンがそう考えている最中に、世良が車掌に尋ねていた。
「なぁ?この1等車って何かあるのか?」
「何かって?」
「ホラ、AからE室って毎年同じ客が予約してたんだろ?」
世良がそう言うと、車掌は納得したように話してくれた。
このベルツリー急行は5年前に完成したそうなのだが、この1等車は鈴木次郎吉相談役が友人の資産家のリクエストを受けて作ったらしい。
その一家は初運行の1ヶ月前に起きた大火事でほとんど亡くなられ、乗客の中で家族はD室の小蓑だけらしい。
「その事件ならネットに載ってるよ!その資産家の誕生パーティ中に起きた火事で、亡くなったのはその家族とパーティに来ていた客達12人……。助け出されたのは今、話に出た小蓑さんとメイドの住友さんと4人の客人って書いてあるけど……」
「ひょっとしてその4人、さっきの乗客達なんじゃねーか?」
小五郎がハッと気づいたように言った。
ちなみに出火の原因は電気系統のトラブルらしいが、詳しいことは分からないそうだ。