第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
7号車のB室。
「ええっ!?毛利探偵事務所に送ったじゃと!?先週のキャンプの時の映像をか!?」
例のシェリーが映っている映像だ。
彼女は燃える山小屋から子供達を助け出したことから、子供達がきちんとお礼をしたいと考えているのだ。
顔と声だけでは無理だが、ネットに流せば知ってる人がいるかもしれないと小五郎は言っていたらしい。
「哀ちゃん……」
瀬里奈が呟くと、灰原は瀬里奈の手をぎゅっと握った。
シェリーを殺しにかかっているのか──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
名古屋駅。
「よいか者共!列車が到着次第車内に突入し、電光石火の如く殺人犯めをふん縛り、儂の眼前に直らせろォ!」
愛知県警にそんな指図をする鈴木次郎吉相談役。
県警のオジさんが恐々ながら口を挟んだ。
「す、鈴木相談役……。私の部下に勝手に指示を出さないでください……。ここは我々愛知県警に任せて……」
そう言われ、鈴木相談役はカッと目を見開いた。
「我が鈴木の名を冠する列車が殺人の舞台にされたんじゃぞ!?貴様、座して待てとほざくかァ!」
鈴木相談役の剣幕に、愛知県警はたじたじだ。
「犯人を捕らえた暁には、その雁首 名古屋城の天守閣に吊るしてくれようぞ!」
「そんな無茶な……」
呆れている県警のオジさんを影から見る黒服が2人──
「どうやらケチな殺しがあったようですが……ツキはこっちに向いてるようですぜ……兄貴……」
ジンとウォッカだ。
「ああ……。ノンストップであの鉄の蛇を我々の元に運んで来てくれるんだからな……」
ジンは携帯を見ながらそう言った。
「たった今、ベルモットから知らせが入ったぜ……。シェリーを列車内で確認したってなァ!」
「じゃあ今頃、ベルモットとバーボンはあの女を……」
ウォッカがそう言うが、ジンは「フン……」と鼻で笑った。
「奴らがあの女を殺ろうが捕えようがどうでもいい……。要はあの女が蛇の胃の中にいるかどうか……」
そしてニヤリと笑った。
「蛇に飲み込まれているのなら、シェリー……この名古屋がお前の終着駅だ……」