第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「えぇ……確かに呼び鈴で車掌さんを呼んだわよ!私の部屋で妙な音がしてたから……」
音の原因は腕時計のアラームで、車掌を呼んだのは文句を言うため。部屋を調べさせるために呼んだわけではないらしい。
「じゃあ車掌さんはずっと廊下にいたのに、被害者のB室に入る不審人物は見てないんですか?」
「そ、そういえば……」
出波の苦情を聞いていた時、1番向こうの扉が開いていて、扉越しに誰かがこちらをチラチラと見ていたような気がすると言うのだ。
「その怪しい人を見る少し前に、D室から出て来た小蓑様がメイドさんに車椅子を押されてそちらの方へ行かれたので……あの2人なら見ているかも……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「A室の……扉?」
小蓑が不思議そうに言った。
「私達が通った時にはそんな扉開いてませんでしたわよ?もちろん、その扉のそばにいたという怪しげな方も見ておりませんし……。ですわよね住友さん?」
小蓑の車椅子を押してくれていた住友にそう尋ねる。住友も頷いた。
「はい奥様……。開いていたのは出波様の怒鳴り声が聞こえていた……E室の扉だけでございますわ……」
また、コナン達がB室に行く途中にこの2人とすれ違ったらしいが、彼らもまたA室の扉が開いているのを見ていない。
「あ、そ、そういえばボウヤ達が来る直前に、C室の安東さんが様子を見に来られたのでもしかしたら見てるかも……」
そういう車掌の言葉を入れ、4人は安東の部屋に向かった。
「ああ……。出波さんの怒鳴り声が私の部屋まで響いていたので……部屋を出て様子を見に行ったんです……。何事かと思って……」
だが、その時にA室の扉が開いていたかどうかは分からないという。
その上、あの時は列車がトンネルの中に入っていて光がなく、廊下も薄暗かった。
「ところであなた方、8号車の乗客はお互いの名前と部屋を微妙に把握しているようですが……知り合いとか?」
彼らは毎年この1等車を真っ先に予約される常連で、いつも同じ部屋を予約されるらしい。
全員の話を聞き終わった後、小五郎が相変わらずの迷推理を披露して世良とコナンに呆れられていた──