第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
──第三者side
「何!?名古屋まで停車しないだと!?」
世良が車掌にそう文句を言った。
近くの駅に停めろ、と言ったにも関わらず、列車は名古屋までノンストップ運行するというのだ。
「そ、それが……この列車のオーナーである鈴木次郎吉相談役の鶴の一声で……」
鈴木次郎吉相談役というのは園子の伯父にあたる人物で、かなりの権力を持っている(らしい)。
そんな権力者が、
『儂の列車の中で人を殺めた不届き者は儂の目の前でお縄にせよ』
と言って、名古屋駅で待ち構えているというのだ。
世良やコナンからすれば傍迷惑な話である。
「まぁ心配ご無用……。名古屋駅に着く前に、私、毛利ポア郎が……このベルツリー急行殺人事件の真相を見事見抜いてご覧に入れましょう!ナーハッハッ!」
小五郎がニヤニヤとしながらそう言って登場した。
そしてコナンと世良、小五郎という何ともちぐはぐな3人で捜査が始まる──
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
車掌が被害者の室橋氏を最後に見たのは、能登氏のA室の前にいる時。呼び鈴が鳴ったからA室の前に行ったら、能登に『私は呼んでいない』と怒られたらしい。その時に、誰かと電話をしていたらしい室橋が隣のB室の扉を開けてこちらをチラチラと見ていたそうだ。
「んじゃ、まずはその能登さんに話を聞いてみようよ!ポア郎さん?」
世良が小五郎にそう言った。
小五郎はまんざらでもなさそうだ。
「ああ……。私もその時、扉越しに室橋さんの声は聞いたよ……。まさか彼が隣の部屋にいるとは思わなくて驚いたがね……」
彼は呼び鈴を鳴らしていないのに、なぜか勝手に車掌がやって来た、と主張していた。
「でもさ……呼び鈴鳴らしたら扉の上のランプが点くはずだから間違えないと思うけど……」
コナンがそう言った。
「じ、実はこのA室のランプだけ電球が切れていて……。だから呼び鈴が鳴ってるのに、どの部屋にもランプが点いてなかったから……てっきり能登様の部屋だと思ってノックしたんだけど……」
「んで?その後は?」
「A室とB室の扉が閉まったすぐ後に呼び鈴が鳴り……出波様のE室のランプが点いていたので行ってみましたけど……」