第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
《お客様にご連絡致します……。先程、車内で事故が発生したため……当列車は予定を変更し、最寄りの駅で停車することを検討中でございます……。
お客様には大変ご迷惑をおかけしますが……停車いたしましてもこちらの指示があるまで各自の部屋の中で待機し、外に出ることは極力、避けられるようお願いいたします……。
なお、予定していた推理クイズは中止とさせて頂きます……》
哀ちゃんが私の服の裾を掴み、周りを見回す。不安なのかな。そう思った矢先、私達の横を見覚えのある人が通り過ぎた。
「!!?」
頬に火傷の跡がある、赤井さんそっくりの男──
それを見た哀ちゃんの表情がみるみる内に青ざめ、恐怖の色に染まる。
(何で……。安室さんの変装?)
私は心臓がドク、ドクと脈打つのが分かった。
でも──
「あれ?あなたも乗ってたんですね!安室さん!」
……え?
じゃああの彼は──誰?
安室さんはネットでこの列車のパスリングをうまく競り落とせたらしく、先程食堂車で小五郎さんとも会ったらしい。
「おや、瀬里奈さんも乗ってたんですね!」
彼に見つかり、私は小さく会釈した。
「どうも……。あの、安室さん」
「はい?」
「ちょっといいですか?」
そう言って私はみんなから少し離れて、安室さんに話した。
「……ベルモットも乗り込んでるの?」
私が目上の人に敬語を外すのは、組織の時だけ。つまり、今は“ルシアン”として訊いている。
彼も“バーボン”として答えてくれた。
「ええ……。あの男に変装して、シェリーとやらの前に姿を現してくれたそうですよ……」
じゃあやはり、さっきの火傷赤井はベルモット……。
「そう……ありがと」
そう言って私は哀ちゃんの前に立つ。
「それより車内で事故があったようですけど……。何か聞いてます?」
今度は“安室透”として訊かれている。
私はニコリと笑い、工藤瀬里奈として答えた。
「それが、1等車で殺人事件があって……。今、世良さんとコナン君が現場にいるんですけど……」
「ホー……。それなら毛利先生にお任せした方が良さそうかな?」
先生とか……思ってもないくせに白々しい。
私はそう言いたいのをグッとこらえた。
そんな私達を影から見ている人が──