第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
室橋さんのこめかみをじっと観察する。
「!……こめかみの銃槍に焦げ跡がない……」
離れた位置で撃たれた証拠だ。
拳銃で自分の頭を撃ち抜く場合、銃口は頭に密着するはず……。そして、拳銃にはサイレンサー。それが付いている銃はかなり長くなるから、頭から離して撃つ方が無理がある。それに、自殺する人がわざわざサイレンサーなんて使うことはない。
「それにホラ、向かいのソファに拳銃で撃ったような跡がついてるよ!」
コナン君がソファを指差す。
「多分、被害者の手や袖口に発射残渣をつけて自殺に見せかけるために……遺体に拳銃を握らせて、1発余計に撃ったのさ!」
世良さんが説明する。
もちろん、犯人の手や袖口にも発射残渣は付いているだろうが、手に付いた物は水で洗えばすぐ落ちるし、部屋の窓は開くから、服は外に捨てられているかもしれない。
「でも犯人はまだこの蛇の腹の中……」
私はフッと笑った。
「逃しはしない……わよね?探偵さん達?」
世良さんとコナン君にそう言って笑いかける。
と、私の携帯にメールが入った。送信者は──
「……!」
ふとコナン君を見ると、彼も携帯の液晶を見て表情を変えていた。
「……瀬里奈」
「ん。……任せて」
私は子供達と蘭ちゃん達を連れ、7号車の蘭ちゃん達がいた部屋に戻った。
「じゃあ子供達をよろしく頼むよ!」
世良さんに頼まれ、私はこくりと頷いた。
「じゃあ部屋に──」
そう言ってドアの方を振り向く。と、車掌さんの他にも8号車の乗客が部屋に集まっていた。
とにかく警察に連絡して近くの駅に列車を停めること、車内放送で警察が来るまで部屋から出るなと伝えることを世良さんが車掌さんに指示したのを確認し、私達は8号車を後にした。