第20章 漆黒の特急──ミステリートレイン
「それは……クリスティの小説の読みすぎじゃない?」
私が言うと、コナン君も「そうそう」と頷いた。
でも──何となく、哀ちゃんの言いたいことは分かる。
確かに列車内は殺気立っている。バーボンとベルモット、昴さんに“彼女”──他にもいるかもしれない。
「……なーんか、なぁ」
「ん?何か言ったか?瀬里奈?」
コナン君に訊かれ、私はニコッと笑って「何でもないよ」と答えた。そして哀ちゃんに一瞬だけ視線を向ける。
「大丈夫よ、味方はいっぱいいるから……」
哀ちゃんに向けてそう言う。哀ちゃんは目を見開いて驚いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして園子ちゃん達がいた8号車に向かう。
園子ちゃんがドアを開けようとすると、ドアにはチェーンロックがかかっていた。
どうやら室橋さんは、チェーンロックをかけたままソファに座ってうたた寝をしているらしい。
「こめかみから血を流して、まるで死んでるみたいにね!」
園子ちゃんは「どーせまた推理クイズのネタだろうけど……」と信じていない様子だったが。
でも……
(こめかみから血を流して、まるで死んでいるみたいに──って、おいおい。それってまさか──)
コナン君と世良さんがドアの隙間から部屋の中を覗く。と、2人揃って呟いた。
「硝煙の……匂い……」
コナン君と世良さんが血相を変えてドアをぶち破る。と、そこには──
「な!?」
──こめかみから血を流して、ソファにぐったりと座って死んでいる室橋悦人さんがいた。