第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
「そうそう。言い忘れてたけど、樫塚圭が強盗犯だと思った1番の決め手は、彼が持っていた大量の小銭とお札!小銭が5千円分で千円札が47枚っていくら何でも多過ぎるよね?」
あれは強奪した2億円の記番号が警察に知られていたため、安い買い物をすることで1万円を少しずつ崩していたのだ。
手川が牛丼ばかりを持ち帰って食べていることも同じ理由だ。牛丼屋の食券販売機は1万円札が使える物もあるし、テイクアウトすれば店に留まらずに済み、顔を覚えられる危険も減る。
コンビニやブランドショップとは違い、防犯カメラの付いていない所も多いため、そういう所を選べば、後でその問題の1万円札が見つかったとしても、映像には残っていないからだ。
「どお?納得して自首する気になった?」
「ええ……そうね……。ボウヤの推理に免じて警察に行くことにするわ……。でも君の推理……1つだけ間違ってたわよ?」
「え?」
コナンがきょとんとして問う。
「樫塚圭って男の部屋から持ち出した拳銃は2丁だけ……。もう1丁は護身用に知り合いのガンマニアに譲ってもらった本物そっくりのモデルガンよ……。もちろん弾は出ないけどね……」
と、助手席のドアが開いた。
「そこまで知られてたら黙って帰すわけにはいかないねぇ!!」
手川隆代だった。
「さぁ!早く車を出しな!誰もいないいい場所へ案内してやるからさぁ!」
2人は手川に尾けられていたのだ。
コナンの左腕は塞がれており、麻酔銃が撃てない状態。
「ホラ!グズグズするんじゃないよ!」
そして手川は持っていた銃で1発。
それを近くで聞いた人間が3名──
「ん?」
沖矢と阿笠博士、灰原だった。
「い、今銃声のような音が……」
「あの車よ!」
博士の言葉に被せるように灰原が言った。
「あの車に江戸川君が乗ってるわ……」
「ではこのことを毛利さんに伝えて下さい……」
沖矢がそう言った。博士がきょとんとする。
「え?警察じゃなくて?」
「こうなった経緯を正確に警察に説明できるのは彼らのみ……。車種と色とナンバーを伝えて検問を張れば止められます……」
「じゃ、じゃが人質を楯に取って検問を突破されたら……」
「その時は……力尽くで止めるまでですよ……」
沖矢のただならぬ雰囲気に、灰原の心臓は恐怖で、ドックン。と鳴った。