第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
「でもまあ、ついて来たのは強盗犯の残りの1人が誰なのか知りたかったからもあるから……。お姉さんがボクの言う通りにしてくれるなら教えてあげてもいいよ!」
「え?」
「ボクの推理に納得したら……その犯人を警察に任せてお姉さんが自首してくれるって……約束してくれるならね……」
話をしているうちに車を停めた所に着き、2人はそれぞれ運転席と助手席に乗った。
「わ、分かったわ……。ボウヤの言う通りにするから教えてよ……。残りの1人の痩せた強盗犯……さっき会った3人の女の中にいるんでしょ?」
「うん!お姉さんも見てたでしょ?強盗犯3人を捉えた防犯カメラの映像!あれに痩せた強盗犯の特徴が映ってたから割と簡単だったよ!」
「と、特徴?」
痩せた強盗犯は拳銃を右手で持って隠そうとしていたが、本当は左利き。何かを乗り越えようとする時に最初に出るのは利き足で、利き足が左の人は左利きが多いのだ。
それに、ガムテープの本体を右手で持って左手でテープを出していたし、仲間が発砲した際に口元に伸びた手も左手。人は動揺した時に自分の顔を触って落ち着こうとするが、思わず出るのは利き手なのだ。
最初に訪ねた豊北倫子は右利き。理由はコナンが部屋に入った時に見たリビングの中だ。
まず、カップの取っ手が椅子に対して右向きだったこと、そしてフライパンの柄が左でフライ返しが右なのは右手で料理をしているから。それに、右手でバターナイフを使わなければ、刃の左側にバターはつかないから。
また、2人目の降屋栄絵も、ドアの鍵を開ける手が右だったから右利き。
「だ、だったら3人目の手川って人が……」
浦川が言う。コナンは自信満々で頷いた。
「うん!カップの取っ手が左を向いてたし、メモ用紙が電話の左なのは電話中に左手でメモを取るからだし……。何かを書く時、左手の影が出ないように電気スタンドが机の右側についてたし……ペンもサイドテーブルも左側だったしね!」
彼女はコナン達を早く追い返すために『締め切り間際のライター』などと言っていたが、いくら自宅に家電があっても携帯の電源は落とさない。
あれは毛利探偵事務所で男が拳銃自殺したとTVのニュースで知り、樫塚圭が強盗犯だと毛利探偵にバレて自殺したと思い込んだ手川が、警察が彼の携帯の電話帳から自分に電話してくるのでは、と思い、携帯の電源を切ったのだ。