第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
「でもお姉さんには教えられないけどね……」
「な!? 何よそれ!?話が違うじゃない!?」
浦川は怒り狂い、コナンに詰め寄った。
コナンは悲しそうな顔をして言う。
「だってボク、死なせたくないんだもん……お姉さんを……」
「!?」
だがすぐに平静を装い、2人は歩きながら話をした。
「バカね……何言ってるの?ボウヤ……。私を死なせたくない?まさか私が強盗犯の残りの1人を殺したら、自殺するとでも思ってるわけ?」
浦川がコナンにそう尋ねる。コナンはあっさり頷いた。
「うん!違うの?」
「どーせ、私のコートに睡眠薬のケースが入ってたからそう思ったんでしょうけど……あれは最近眠れなかったから持ってた薬……量も少ないし、あれだけじゃ死ねないわ……」
それを丁度いいから、という理由でコナンを誘拐する際に使っただけということ。まあ、コナンにはバレて眠ってくれなかったが──
「ホラ、やっぱりお姉さんの犯行は杜撰すぎるよ……」
睡眠薬もそうだが、最初に殺した小柄な男をスーツケースに隠した所まではいいが、死体と一緒に盗聴器を入れるのはマズイ。恐らく、死体を発見した時の樫塚圭の恐怖する声が聞きたかったのかもしれないが、あれでは家中に盗聴器を仕掛けていると言っているようなもの、逆に警戒のタネになり得るからだ。
「それに迂闊にも、その男を撲殺した時に使った拳銃が、グリップに血がついたままお姉さんの車のグローブボックスに入ってたし……。もう一丁の拳銃と一緒にね……」
探偵事務所で樫塚圭を射殺した拳銃を含めると計3丁。あれは恐らく、銀行強盗に使った3丁を樫塚圭の部屋で見つけて持って来たのだろう。
その樫塚圭を殺した後で彼と自分の携帯をすり替えたのも大失敗。自分の携帯に入っているメールや電話帳は消したようだが、警察に渡ればすぐ持ち主を特定できるのだ。
「そう……お姉さんの行動はその場凌ぎで計画性がまるでない……。たとえ思い出のメールや、写真や親しい友人の電番が消えようが構わない……恋人を殺した強盗犯の3人さえ殺すことが出来たなら、後はどうなってもいいって感じ……。それってこの世に未練は何も無いってことでしょ?だからボク……お姉さんについて来たんだよ……お姉さんをこの世に繋ぎ止めるためにね!」
浦川は不敵に笑うコナンを見て、悲しそうな表情をしていた。