第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
「で、でもガムテでどうやって自分を縛るんですか?」
蘭ちゃんが不思議そうに訊いた。私は答える。
「簡単よ。まずはテープをビーッと引き出しておく。そして、ガムテ本体にある真ん中の穴をトイレのノブに引っ掛けて、テープをピンと張ったまま体を回転させて巻きつけるだけよ……」
その証拠に、彼女の体に巻き付いていたガムテは肘から上のみ。そうすれば両手が使えるため、ガムテをノブから外すことができる。口を使えば手首にもガムテは貼れるから。
「な、なるほど……。でも何で強盗犯の2人を殺害したんだ?」
小五郎さんが怪訝そうに問う。
「多分……さっきの痩せた3人目を捜すためじゃないでしょうか?ここからは想像ですが……恐らく彼女はあの日、強盗現場にいたんですよ……。そして、賢也さんが犯人に向かって言った言葉の意味を知っていた……」
「言葉の意味ィ?」
小五郎さんが怪訝そうな顔をした。
「賢也さん……あの時、『OK!止めてくれ』って言ってたってお客さんは言ってましたよね?でも、それが『おい圭!止めてくれ』だったとしたら……?」
「……まさか!」
賢也さんは強盗犯の中に友人の樫塚圭がいることに気づき、彼を止めようとした。だが運悪く、樫塚圭に口封じをされてしまった。
「じゃあ、お兄さんを殺された恨みで殺人を……?」
「ううん、違うわ蘭ちゃん。彼女は賢也さんの妹じゃない……」
「え!?」
蘭ちゃんは驚いたように目を見張った。
私は続ける。
「多分、彼女は賢也さんの恋人よ……」
「なんで分かるんですか?」
蘭ちゃんが物凄く不思議な顔をした。私は確実な答えではないため、苦笑いしつつ言う。
「彼女が強盗現場にいたとすれば、の話なんだけどね?普通、銀行では不正防止のために同じ支店に親族の配属は避けるのよ。だとすると、2人が兄妹っていうのはおかしいでしょ?」
だから、彼女は賢也さんの恋人──と思われるというわけだ。