第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
──第三者side
「でもどーやって追跡する気なのよ?博士のビートル、今修理に出してるんじゃなかった?」
灰原が焦ったように言う。
「こーなったらタクシーに無理を言って追うしか……」と博士が言った時──
「では、私の車で追いますか?」
玄関から声がした。声の主は沖矢だ。
「申し訳ない……立ち聞きするつもりはなかったんですが……。クリームシチューのお裾分けに来てみたら、戸口で何やら不穏な会話が耳に入って……」
咄嗟に灰原が博士の後ろに隠れる。
「さぁ、追うなら早く……」
「じゃ、じゃあ車のキーだけ貸しなさいよ!私と博士で追跡するから!」
灰原が博士の後ろからそう吠える。
だが沖矢の車は少々癖があるらしく、彼の運転でないといけないらしい。
「だったらワシと昴君で追跡を……」
博士が灰原の気持ちも汲んでそう言う。沖矢はにこやかに笑って了承した。
「ええ……それでも構いませんよ……。君が1人でここに残って、あの子の安否情報をやきもきしながら待っているつもりならね……。よければ君も一緒に行くのをお勧めしよう……。もちろん、無理強いはしませんが……」
「……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私は安室さんと手分けして、部屋の中を隅々まで調べた。
「どうでした?」
安室さんと合流して、私は彼に尋ねた。安室さんは怖い顔をして頷いた。
「……おかしいですね」
「やっぱり?えっと……そっちは靴箱でしたっけ?」
そう訊くと、安室さんはこくっと頷いた。
「ああ。靴は男物ばかりだったよ……」
「私も一緒です。洗濯物やクローゼットの中にも女物の下着とか服とかありませんでした。……おかしいですよね?」
そして2人で寝室に戻り、部屋にいた小五郎さんと蘭ちゃんにそのことを報告する。
「じゃあここに住んでたのは圭さんの亡くなった兄だけだったってことか?」
蘭ちゃんがきょとんとしたまま私と安室さんを見ている。
「それはまだ分かりませんが……この部屋の住人が、先日起こった“ある事件”にかなり注目していたのは確かですね……」
「ある事件?」