第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
そしてポケットに入っていた物を全て見せてもらう。
入っていたのは傷のないスタンガンとタバコ、そしてそれらと反対に傷だらけのライターと財布。
コインロッカーの鍵は高木刑事が捜査をしているから、ここにはないそうだが。
私はそれを見て、またパシッと頭が痛くなった。
痛い……。何かが引っかかる。
「瀬里奈姉ちゃん、何か気づいたことあった?」
「え……?わ、私……?」
コナン君に訊かれ、私はきょとんとしてしまった。
「え、と……」
私は少し口ごもった。
その間にも目暮警部が圭さんに色々尋ねる。
「そういえば遺体の足元に落ちていたタオルの片方の先が濡れていたようですが……なぜだか分かるかね?」
「さぁ……怖くてずっと俯いてましたから……」
「それと、そのタオルの下にあったあなたのブーツの靴紐の先に結び目があって、引っかかっていたんだが……」
「あれは子供の頃からの癖です……」
布製のスニーカーとかを丸洗いして干すときに、紐がそうなっていると吊るしやすい、と圭さんの兄に教えられたらしい。
さすがにブーツは洗わないが、癖だけが残っているのだとか。
「では明日、改めて事情聴取しますので……住所と連絡先を教えて頂けるかな?」
「は、はい……何かに書きますね……」
圭さんは紙とペンを持って住所と連絡先を書き始めた。
「できれば身分を証明するものがあれば……」
「大学を出たばかりの就職浪人なので名刺は……。家に帰れば保険証がありますけど……」
「じゃあ明日持ってきて下さい……」
「分かりました……」
そして圭さんを安室さんが送って行くということになり、なぜか私と小五郎さん、蘭ちゃん、コナン君もついて行くことになった。
「佐藤刑事の車と色違いだね!」
蘭ちゃんがニコニコして言った。
「──って、なんでお前らまで乗ってんだよ!?瀬里奈ちゃんは分かるけど!」
え、何でそこで私を巻き込むの?
私は少し驚いて困ったけれど、その内に私とコナン君を挟んで2人の言い合いが始まる。
「お父さんこそ何で乗ったのよ?人が死んだ事務所にコナン君と2人じゃ心細いじゃない!」
「お、俺は圭さんが心配で……」
そんなやり取りに、私はどうするべきかとあたふたしていたけど、コナン君は冷めた目で私の膝上に乗っていた。