第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
「で、でも何でそんなこと……。コインロッカーを探してもらいに来ただけなのに……」
「そのロッカーにとんでもねぇ物が入ってんじゃ……」
蘭と小五郎がそう言った。
安室がドアを振り向いて言う。
「さぁ、それは……本人に直に訊いてみましょうか!」
「ほ、本人って……」
「まさか!?」
「先生がトイレに入ろうとした時、ちょうど返信が来ましたよね?そして、コナン君がトイレに入ろうとした時も……」
そう言いつつ安室はコナンに視線を向けた。
「それにトイレの床にさー……何かを引きずったような跡がついてたよ!」
「ええっ!?」
コナンはパタンとドアを閉めた。
「そう……恐らくその誰かは何らかの理由で依頼人を連れ込み、まだ隠れているんですよ……。あのトイレの中にね……」
パァン!
「!?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──瀬里奈side
パタン、とドアが閉まった音がしてしばらくした後。
今度はドアが開く音がした。
「本人に直に訊いてみましょうか!」
安室さんの声。
蘭ちゃんや小五郎さんの声もする。
「それにトイレの床にさー……何かを引きずったような跡がついてたよ!」
コナン君の声だ。
私と依頼人さんを連れ込んだ人は、どんどん近づくその声に焦りを見せていた。
そして4人の視線がトイレに向いた時──
パァン!
拳銃で──
「〜〜っ!!!」
私はその現場を見た瞬間、ぐるぐると今の場面が頭の中を駆け巡った。
思い出すのは──
『お兄……ちゃん?何で……パパを殺すの?』
『だって……瀬里奈を泣かせたんだよ?殺すのは……当たり前だろ?』
あの日の惨劇。
嫌、思い出したくないの──
『……じゃあ忘れる?』
もう1人、血に塗れた私がそう囁いた。
『そうすれば、何も思い出さなくて済むよ?そうしよう?』
その甘くて優しい声の響きに手を引かれ、私の意識は泥の中に沈んだ。
『ふふっ……ばいばぁーい』
血塗れの私の笑い声を聞きながら……。