第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
──第三者side
コロンボから探偵事務所に戻って来た4人だったが、事務所には人っ子ひとりいなかった。
テーブルの上には灰皿と瀬里奈がジャケットに写っているCD。
「あら、これお姉さんのCDよ!まだ売られてないヤツ……持って来てくれたのかなぁ?」
「じゃあ瀬里奈姉ちゃん来たんだね!」
小五郎は一応、最初のメールアドレスに『すぐ戻る』とメールを出しておいたらしい。ならばすぐ来るだろう。
「紅茶でも飲んで待ってる?」
蘭が言った。だが小五郎は「コロンボでコーヒー飲み過ぎたから、トイレに行く」と言ってトイレのドアノブに手をかけようとした。
その時。
依頼人からメールが来た。
「お!依頼人から返事来たぞ!」
「え?」
「『たった今、コロンボに着いたから来てください』って……」
「じゃあ早く行かなきゃ!」
蘭が言った。
コナンが「じゃあボクもついてくからちょっと待ってて!トイレ、済ませちゃう……」と言いトイレに向かおうとする。
と、またメールが入った。
「また依頼人からメール……『急いでみんなで来てくれ』って……」
それを聞いた安室とコナンは、怪訝に思っている小五郎と蘭を連れて事務所の外に出た。
そしてドアを閉めた後、安室が人差し指を口の前に立て、静かにするようにジェスチャーをする。
「恐らく……こういうことですよ……。
依頼人を毛利先生に会わせたくない人物がいて……場所変更のメールで先生を追っ払い、空になった探偵事務所で事務所の人間としてその依頼人と落ち合ったんです……」
小五郎と蘭が「ええっ!?」と声を上げる。
「その証拠に入口のこのドアの鍵穴にはこじ開けた跡があり……食器棚の中に僅かに濡れたティーカップがありました……。蘭さんの性格からして、濡れた食器をそのまま棚にはしまわないでしょ?」
「は、はい……」
蘭が呆気にとられつつ頷く。コナンも口を添えた。
「それにさー……テーブルの上に落ちてたタバコの灰も綺麗に拭き取られていたよ?これってボク達が出掛けてる間に誰かが拭いたんじゃないかなぁ?」
安室がまた続ける。
「つまりそれは、誰かが先生の留守中に依頼人を招き入れ、テーブルの上を拭き紅茶を出して持て成した痕跡……。そのティーカップをよく拭きもせず棚にしまったから、まだ濡れていたというわけですよ……」