第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
──瀬里奈side
(ん……)
私が目を覚ますと、ちょうど私を気絶させた人と依頼人さんがいた。
どうやらここはトイレらしい。
外から微かに聞こえる話し声は小五郎さん、蘭ちゃん、コナン君に安室さんの声。
何で安室さんがいるの?とは思ったけれど、口には出さない。というか、出せない。
腕は肘から上をガムテープでぐるぐる巻きにされ、手首は前でお祈りのポーズの様にガムテープで留められている。
そして口にはまたもやガムテープ。声が出せない様にということだろう。
小五郎さんの声が近くまで寄って来た。
「コロンボでコーヒー飲み過ぎたから……ちとトイレ……」
やった!
これで彼がドアを開けてくれれば──
だけど、それは淡い期待だった。
「ん?──お!依頼人から返事来たぞ!」
待って、それは違うの……。依頼人さんが出したメールじゃないの……。
「『たった今、コロンボに着いたから来てください』って……」
違うよ、それはこの人が打ってるの……。お願い、気づいて小五郎さん……新一……!
「じゃあボクもついてくからちょっと待ってて!トイレ、済ませちゃう……」
コナン君の声がした。お願い、気づいて!
だが、またその人がメールを打った。トイレに誰も近づかないように、という配慮か。
「また依頼人からメール……。『急いでみんなで来てくれ』って……」
そして4人の声が遠ざかってしまう。
お願い、行かないで。祈りは届かなかった──