第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
──瀬里奈side
早朝。
「じゃあ、今日はここまでね。お疲れ〜」
「お疲れ様でしたー!」
私はぺこっと頭を下げて、スタジオを出た。
今日はCDのPV撮影。今回の曲はバラードなので夜中からずーっと撮影ぶっ通し。
雨に濡れるシーンとかもあったから、体はびしょ濡れだ。
「だから着替え持って来いって言ってたんですね、珠希さん」
私はタオルで髪を拭きながら、隣で服を出してくれていたマネージャー・珠希さんに言った。
珠希さんは鞄から服を出し、私にぽいっと投げ渡した。
「そうよー。ホラ、早く着替えなさい。今日はこの後何も仕事入れてないから、ゆっくり休んで明日また仕事よ」
「あー……明日は大学午前2時間だから……」
「大丈夫、スケジュールは完璧よ」
「あい……」
私はため息をつきながら更衣室に入った。
そしてタオルドライした髪を軽くまとめ、服が濡れないように気をつけながら着替える。着替え終わったらドライヤーで髪を乾かし、化粧を軽く直す。
「珠希さーん。着替え終わりましたぁ」
「じゃあ車乗って!家まで送るわ」
ちょっと遠くで聞こえる珠希さんの声。
私は着替えた服を鞄に詰めなおして、車に積んだ。
「あ、そうだ瀬里奈」
「はい?」
車に乗ると、珠希さんがCDを1枚渡してきた。
「これ、今回の曲も入ったCD。バイト先で流して貰えば?」
「え、いいんですか?」
「学校とバイトと歌手と、って色々掛け持ちして頑張ってるからね。私からのご褒美よ」
珠希さんはこういう所が優しい。
私はふにゃっと表情を崩した。
「ありがとうございます珠希さんっ!やっぱり優しいですよね!」
「え?そ、そうかしら?」
「そうですよ!何でカレシが居ないのかが不思議なくらい!」
「……瀬里奈は一言余計なのよね」
「え、何でですか」
私はきょとんとして珠希さんに尋ねた。
珠希さんははぁー、とため息をついたけど、それ以上は何も言わずに車を発進させた。