第19章 探偵たちの夜想曲(ノクターン)
「あ"〜〜!! ヨーコちゃんのライブ忘れてた!!」
「いいじゃない!録画してるんだから……」
蘭がサンドイッチをテーブルに置いて言った。
これを生で観るために依頼人と会う時間をズラしたらしい。
「でもこれから依頼人が来るのは合ってたんですね?」
「ああ……。でもどんな奴が来るかは分からねぇよ……。何しろネット経由で依頼して来た……第1号のお客さんだからな!」
そう言いつつ小五郎は事務机の上のパソコンに目を向けた。安室もそれを見て感心したように言った。
「へぇ〜、ネット上に探偵事務所を立ち上げたんですね!」
「ああ!ウチもグローバルな世の中に対応してデジタル化しようと思ってよ!」
まあ、ホームページを作ったのはコナンなのだが。
「まぁ、このライブが終わったら丁度依頼人が来る時間に……」
と、小五郎の携帯がブルった。
「ん?メール?」
小五郎は携帯を開き、受信メールを見た。
「えーっと……『今日、そちらに伺う約束をしていた樫塚圭ですけど……こちらの都合でお会いする場所をレストラン“コロンボ”に変えたいのですが……その店ならそこから割と近いですし、時間通りにお会いできると思いますので……OKかどうかお返事をお待ちしております……』──って面倒臭ぇ、断っちまうか……」
小五郎がそう言うと、蘭が慌てたように止める。
「ダメよ!せっかくのお客さんなんだから……。それに私もコナン君もお昼まだだから、コロンボで済ませてもいいしさ!」
「安室君のサンドイッチ食べねぇのかよ?」
蘭はテーブルに置いたサンドイッチを取り上げた。
「これは夕飯用に冷蔵庫に入れとけばいいじゃない!」
「晩飯サンドイッチかよ?」
そう言った小五郎の加えているタバコの灰がポロ、とテーブルに落ちた。
「ちょっとお父さん!?タバコの灰落ちてるよ!!」
「あ……」
「火事になったらどーすんの!?」
小五郎が灰をパッパと払い、タバコの火を消した。
「まぁ、ウチの家計は誰かさんが仕事サボってるおかげで火の車寸前だけどね!」
「あ……その洒落おもろい……」
蘭が冷蔵庫にサンドイッチを入れるために部屋を出る。
「では、僕も同席して構いませんか?今日のポアロの僕のシフトはお昼までですし……」
「いいけど……同席するならちゃんと授業料払えよ……」
「もちろん!」