第18章 3人の容疑者──bourbon
「な、何言ってんですか?さっきも言いましたが、血縁者でない限りゲノムのほぼ一致はまずありえません!現在、同じDNAの別人が現れる確率は4兆7000億人に1人とされてますし……第一、女性には男性だけが持ってるY染色体がないからすぐに分かりますよ!」
「問題の皮膚が雨や泥で汚染され、性別の部分が不明だからほぼって言ってるかもしれねぇだろ?」
「……だとしても……そんな2人が偶然出会い、たまたま恋に落ちて結婚しようとしたっていうんですか!?」
声を荒げる安室さんに、小五郎さんは静かに言った。
悲しい真実を──
「出逢ったのは偶然かもしれねぇが……惹かれ合ったのは必然だったと思うぜ……。双子だったんだからな……」
「ふ……双子!?」
私と小五郎さん(を演じているコナン君)以外の人が、目を丸くさせた。
「伴場……お前ら言ってたよな?2人は誕生日も血液型も一緒で……黙っていてもお互いの考えてることが分かることがあるって……」
「あ、ああ……。でもそれだけで双子だとは……」
伴場さんはその事実を信じたくないかのように言った。
「お前は知らなかっただろうけど……お前と初音さんは赤子の頃……同じホテル火災で助け出されて、身元不明のまま同じ教会で育てられた2人だったんだよ!」
「ほ、ホテル火災!?」
その火事で両親が焼死してしまい、双子だと分からなかったのだ。
だが疑問が残る。
「しかし双子だとDNAは同じになるのかね?」
目暮警部の質問には安室さんが答えた。
「稀にあるんですよ……2つに分かれる前の受精卵の染色体がXY(男)の場合、多胚化する際に一方のY染色体が欠落し、XY(男)とXO(女)に分かれ……異性一卵性双生児として誕生するケースがね……」
初音さんの身長は140の後半。
異性一卵性双生児の女性の方は、ターナー症候群で低身長になりやすいのだ。
安室さんに2人が同じ火事で助け出されたことを聞かされ、『後は自分で調べる』と言っていたのなら……
その調べる内容は2人が双子かどうか明確になるDNA鑑定以外考えられない。
「恐らく彼女はネイルサロンからここへ戻り、車を降りたその時に……鑑定を依頼していた業者からの電話が鳴り、その結果を聞かされちまったんだよ……。
お前と初音さんは結婚することを許されない……血の繋がった双子だってことをな……」