第18章 3人の容疑者──bourbon
「靴?」
「靴はそう簡単に切り刻めねぇぜ?」
小五郎さんにそう言われた安室さんは、少し困ったように笑った。
「靴なんて履き替える必要ありませんよ!歩き続けて止まらなければ、どんな靴かなんて判別できませんし……。実際、彼の靴はどこにでも売ってそうなスニーカーですしね……」
それを聞いた小五郎さんは「じゃあ伴場!脱いで見せてやれ!お前のスニーカーの裏側を!」と言った。
「それはお前が……犯人でないという……証拠だよ!」
伴場さんの靴の裏の溝に、クリームのようなものが付いていた。
私はハッとして説明を付け加えた。
「あ、それ安室さんが落としたチョコレートケーキです!」
「伴場さん、床に落ちたケーキ踏んでましたから……」
蘭ちゃんもそう話す。確かあれは、初音さんがネイルサロンに行く前だったはず。
事件当時、雨がかなり降っていて濡れた路面を歩いたのなら、クリームはほとんど取れてしまっているはず。急いで帰ったのならなおさらだ。つまり、これは彼が店から出ていないという証拠になる。
「実は最初、私がそれを目にした時……これは伴場の仕掛けたフェイクかと思いました……。本当は何らかの方法で靴を履き替え……探偵である私に靴の裏のクリームを見せて店から出てないことを証明させる気だとね……」
だけど、そのケーキは安室さんが落としたが故に偶然踏んだものだし、伴場さんは靴の裏にクリームが付いていることを一向に言い出さない。
しかもあろうことか、雨の中店外へ出てその大切な証拠を台無しにしようとしている。
「だから確信したんですよ……。そのクリームはフェイクじゃなく……伴場の無実を証明する証拠だとね……」
だが安室さんが反論する。
「で、でもDNAは!?彼女の付け爪の先に彼のDNAとほぼ一致した皮膚が付いていたんですよ?彼がその時、彼女のそばにいたって証拠じゃないですか!」
「付け爪に付いてたのが彼女本人の皮膚だったって場合は考えねぇのかよ?」