第18章 3人の容疑者──bourbon
付け爪に彼女の皮膚が付着していたのは、その結果に愕然として、付け爪が外れるほど顔を搔きむしり、泣きじゃくったから。
「その時、彼女が落とした傘の内側に入って風で飛ばされたもう1つの付け爪を今、調べてもらっているから……その結果が出ればハッキリと……」
そこで、目暮警部の携帯が鳴った。
「で、出たんですか?もう1つの付け爪の調査結果!」
「ああ……そっちの爪には血液も付着していた上に、ほとんど汚染されてなく……
伴場さんのDNAとピッタリ一致したそうだ……。性別を示す部分以外はな……」
彼女の遺体から辛うじて取れたDNAとも一致したそうだから、付け爪に付いていた皮膚は彼女のものと断定されたらしい。
「じゃあやはり、彼女は自殺を……」
高木刑事が真面目な顔をしてそう言った。
「そうとしか考えられんが……その業者も間の悪い時に電話したもんだな……」
「多分、2人が明日結婚すると聞かされていて、早く知らせたかったんですよ……。取り返しがつかなくなる前に……」
伴場さんは頭を抱え込み、涙を流した。
「初音ェ〜!!」
伴場さんの絶叫が雨音を切り裂き木霊する。
「でも……何で初音さんは焼身自殺なんて……」
私はポツリと呟いた。
隣に立っていた安室さんが答える。
「それは分かりませんが……もしかしたら、彼女はやり直すために戻りたかったのかもしれませんね……。2人をこんな運命に導いた炎の中に……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
後日。
「こんにちは〜……って」
「ああ、瀬里奈さん。おはようございます」
私がポアロのバイトに来ると、いたのは安室さんだった。
「何でいるんですか!?」
「小五郎のおじさんの弟子になるんだってさ……」
「はぁ?」
コナン君に言われ、私は盛大なため息をつきそうになった。
「そういえば、お姉さん歌手デビューしたんですってね!」
蘭ちゃんに言われ、私は頷いた。
「ええ、下の名前をそのまま芸名に使ってね……。よければ今度聴いてみて?」
「もちろん!園子も世良さんも『いい曲だ』って言ってましたし!」
「あら、世良さんも聴いてくれてるんだ?何か嬉しい」
──とまぁ、色々ありすぎてたまに頭パンクしそうにはなるけれど──
「……楽しいからいっか」
私は誰にも見えないようにくすっと笑った。