第18章 3人の容疑者──bourbon
「さぁね……。彼女が男と密会してるって教えた時はかなり動揺してたが……最近は彼女が誰かとコソコソ電話してた方が気になってたようですよ……。まぁ、どーせこの男と連絡を取ってたんでしょうけどね……」
春岡さんはそう言って安室さんを見た。安室さんが慌てて弁解する。
「あ、いや……。僕は彼女との連絡はメールでしてましたから……。外で会ったのもあなたが見た一度きりでしたし……。ただ……彼女が顔を曇らせたことが一瞬ありました……」
「曇らせた?」目暮警部が怪訝な顔をした。
「自分、探偵なんで彼のことを色々詳しく調べていたんですけど……そうしたらあることが分かったんです……。
彼は彼女と同じホテル火災で助け出された2人で……身元不明のまま同じ教会で育てられていたことが……」
え……?
かなり大きな火事で、死者も大勢出たらしい。そのため、2人の両親はそれぞれその火事で亡くなったのではないか、と推測されている。
確か、初音さんの背は──蘭ちゃんよりも低かったはず……。140後半から150そこそこといった所だろう。
日本人女性の平均身長は大体159㎝。
「目暮警部!」
千葉刑事が戻って来た。
初音さんの付けていた付け爪が1つ足りないのだそう。車のそばで見たかった1つも含め、足りないのは2つらしい。
「じゃあ残りの1つは車内で外れて燃え尽きたか……」
もしくは……まだ残っているか。
私とコナン君はほぼ同時に駆け出した。
「こ、コナン君!?瀬里奈お姉さんも!」
「すぐ戻るから〜!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
外に出て、コナン君が鑑識さんに訊いた。
「え?傘を見つけた場所?」
鑑識さんは不思議そうにしながらも傘を見つけた場所を教えてくれた。
「ねぇコナン君、傘ってどういうこと?」
「初音さんが持ってた傘が駐車場の端まで飛ばされてたんだよ……もしも外れた付け爪が落とした傘の内側に入って飛ばされたとしたら──」
「そうか!そしたら付け爪はこの辺にあるし、タイヤや車体が雨よけになるから……ほとんど汚れていないものが取れるってわけね!」
と、お目当ての付け爪が見つかった。
それを鑑識さんに渡し、私達は店に戻る。
恐らく……これではっきりするはず。
知りたくなかった、悲しい真実が……。