第18章 3人の容疑者──bourbon
「お、おい何言ってんだ!?」
「つまり、あなたなら店をこっそり抜け出し、駐車場で彼女を待ち伏せて気絶させ、車に押し込んで焼殺できたということですよ!」
その上、車のそばには彼女が今夜付けたばかりの付け爪が落ちており、その付け爪の先には微量の皮膚が付着していた。
状況から考えれば、その皮膚は車のそばで彼女が襲われ抵抗し、引っ掻いた時に付いた犯人のものである可能性が高い。しかも、その皮膚のDNAが伴場さんのブラシに付いていた毛髪のDNAとほぼ一致したらしい。
「ほぼということは……その皮膚が先ほどまで降っていた雨や泥などで汚染され、完全なデータが取れなかったためと思いますが……血縁者じゃない限り……遺伝子情報(ゲノム)のほぼ一致は、まずありえないことを踏まえると……
そのDNAは同じ人物のDNAと考えた方が自然ですけどね……」
またやってる。
と、コナン君が何かに気づいたような顔をした。
「どうしたの?」
「あ、瀬里奈姉ちゃん。ホラ、伴場さんの靴……」
コナン君に促され、私も伴場さんの靴の裏を見た。
靴裏にはチョコレートケーキのクリームが溝に付いており、まだ綺麗なままだった。
「ねぇ、コナン君……あれって……」
「うん……おかしいよね?」
私達はDNA鑑定に行った伴場さんを見て言った。
「瀬里奈さん!」
高木刑事に呼ばれ、私は彼の方へ行った。
「何ですか?」
「この店には、正面の出入り口以外にドアはあるんですか?」
そう訊かれ、私は「ああ……」と答えた。
「店の後方に1つだけ……でも、事件当時は雨もひどかったですし、外に出るお客様もいそうになかったので、鍵をかけてました」
「他に出入り口は?」
「トイレの窓から出れば駐車場に行けますけど……」
だが、窓の外を見ると大きな水たまり。そこを通ったならそれによる下足痕(ゲソコン)が残っているはずだが──
「ここは無理みたいですね……」
「他に思い出したことは何か?」
「んー……あ、そうだ!事件当時は風が強かったですよ!窓がガタガタ鳴った時もありましたし……」
ん?待てよ……風?
私が考えていると、目暮警部が春岡さんと安室さんに「心当たりはないのかね?」と訊いていた。