第18章 3人の容疑者──bourbon
──瀬里奈side
「瀬里奈ちゃん!?」「瀬里奈お姉さん!?」「瀬里奈姉ちゃん!?」
本当は3人がここにいること知ってたんだけど……話すと長くなるからいっか。
「パーティに招待されたんですか?」
「ああ、俺と伴場は高校時代の悪友だからな……」
「悪友って……」
私は苦笑いした。
小五郎さんが話を変える。
「瀬里奈ちゃんこそどうしてここに?」
「私はここの短期バイトで……人手が足りないからって採用されたんです」
そう言って笑うと、3人は納得したように頷いた。
「じゃあ、私は仕事があるのでこれで……」
そう言ってぺこりと頭を下げる。お盆を持ってカウンターの方へ行くと、先程粗相をしたウエイター ──安室さんが声をかけて来た。
「うまく入れましたか?」
私は笑って答える。
「ええ……。でも何でわざわざケーキを落とし……?」
落としたんですか?そう訊こうとした私に、安室さんは「シー……」と人差し指を立てた。
「それは瀬里奈さんが気にすることではないですよ……」
「……何それ。腹立つ」
私はぷいっとそっぽを向き、テーブルに料理を運びに行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
やがて初音さんの方はネイルチップをデコしてもらうためにサロンへ向かい、その場を離れた。
女の人とぺちゃくちゃと喋る伴場さん。
彼は初音さんから来たらしいメールを見た後、「ちょっとトイレ……」と言って輪から抜けた。
そして2つ目の携帯を取り出し、怖い顔で誰かと話している。だがトイレに入る前にすぐ電話を切ってしまった。
「……」
私はその一連の彼の動作をじっと見ていた。電話相手はトイレの中か……。
と、安室さんもそれをじっと見ていることに気づいた。
「……怖い顔してますよ」
ひょいっと顔を覗き込む。
安室さんはニコッと爽やかスマイルを浮かべた。
「大丈夫ですよ……」