第18章 3人の容疑者──bourbon
《ど、どういうこと?》
蘭ちゃんの声がした。
それに世良さんの声が続く。
《ホラ、未紅さんが呟いてただろ?キツネが言いがかりを付けて来て、なかなか帰ってくれないって……》
その言いがかりをつけられてた最中に光井さんがやって来てしまったため、ひとまず湯地さんをトイレに隠して、光井さんをやり過ごそうとしたのだ。もちろん湯地さんにはスリッパを持たせて。
《でもその時、湯地さんは風呂上がりで湿っていた自分のスリッパではなく、未紅さんのスリッパを取ってしまい……残った湯地さんのそのスリッパを、今度は光井さんが履いて違和感を感じてしまった……。そういうことだろ工藤君?》
世良さんはコナン君にそう確認した。
「ああ……。あとはさっきの爆弾男の勲さんが言ってた通り……未紅さんを風呂場で自殺に見せかけて殺した後……携帯のメールで、勲さんが窓ガラスを割って入って来るように仕向け……その割れた窓からベランダ伝いに勲さんの部屋へ行き……その部屋のドアからこっそり外に出て……集まってた野次馬に紛れ込んだってわけさ……」
小五郎さんが納得のいかないような声で言った。
《だがなぁ……。最初に来た二瓶さんがトイレにずっと隠れていたって場合も考えられるんじゃねーか?》
だがコナン君はそれも封じる。
「未紅さんの呟きを見れば、居座っていたのは十中八九2番目に来た湯地さんですし……。二瓶さんは他人のスリッパを直すような神経質で几帳面な性格……自分のと他人のスリッパを間違えて取るのはまず考えにくい……。それに犯人が湯地さんだという証拠もありますしね……」
未紅さんが必死に風呂場から抜け出し、血まみれの手で掴んだバスマットの写真がそれだ。
手前の2つは手形がべっとりと付いているのに、その先にある血の跡は指先のみ。あれは何かを掴んだ証拠だ。
「そこで注目されるのが、湯地さんが持っていた未紅さんのサイン本……。本はその印刷方法によって本を開く側、つまり小口が綺麗に揃う場合と揃わずギザギザになる場合がありますが……同じ初版本でその方法を変えることはない……」
なのに、なぜ湯地さんのサイン本だけ小口が綺麗に揃っていたのか。それは湯地さんが小口を紙ヤスリで削ったから。
「今際の際に、未紅さんに掴まれた血の手形を……隠滅するためにね!!」