第18章 3人の容疑者──bourbon
「そう……妹さんがサインを書くために、久し振りに手に取った『死神の葬列』……。自分が生み出したその主人公に自分を重ね合わせ……自分の部屋に居座り続ける死神の幻覚を見ていたのなら……その後、妹さんが取った行動は想像できますよね?」
──その後、爆弾男は外で待機していた警察によって拘束され、泣きながら探偵事務所を後にしたという──
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《でも、マジビビったよ工藤君……。君が本気で犯人を名指しして、あの爆弾男に解体させる気なんじゃないかって……。まぁ、自殺だと分かっていたなら納得だけど……沢栗未紅のデビュー作を読んでいなかったボクには無理だったかな……》
世良さんがそう言った。だがコナン君はさらりと言う。
「悪いがオレも、『死神の葬列』は読んでねーよ……」
《え?》
「あれはその場を凌ぐ為のハッタリさ……。あの爆弾男に妹は自殺したんだと思い込ませる為のね……」
でなきゃ直前まで呑気に呟いてた人が、死神の幻覚を見て突然自殺したなんて非論理的な推理、口が裂けても言わねぇよ……。コナン君はそう言った。
電話の向こうで小五郎さんが「おい……じゃあまさか……」と慌てたように言う。
「ええ……ここからが本題……。ちゃんと存在しますよ……沢栗未紅さんを自殺に見せかけて殺した死神は……その3人の中にね!」
え!?
私は声には出さなかったものの、ぎょっとはした。
正直、沢栗未紅さんの自殺で片が付いたんだとばかりに思っていたから。
未紅さんの付けたあだ名も、部屋に来た順番も先程コナン君が言った通り。
光井さんが一旦部屋を出てからまた戻って犯行を行なったという線はない。
光井さんは未紅さんの部屋から慌てて出てきた所を見られている。そんな不審な行動をとったにもかかわらず、再びそこに舞い戻り、殺人を犯すなんて考えられない。
密室を作り、自殺に見せかけて殺した計画的犯罪者ならなおさら。
光井さんが未紅さんの部屋に行った時、彼女は光井さんにトイレを貸してくれなかった。
ということは──
「そう……彼女の部屋に居座っていたのはネズミではなく……2番目に来たキツネである……
湯地志信さん……あなただったんですよ!」