第18章 3人の容疑者──bourbon
《み、見間違えたんだよ!
その客の部屋は、妹の部屋から3つも離れてたんだろ!?きっと俺の部屋から出て来たのを、隣の妹の部屋からだと勘違いして……》
だが、それもコナン君は封じた。
「その証言者の部屋は、妹さんの部屋と同じ側の隣の隣の隣の部屋……。しかも自分の部屋から出ようとしたら、光井さんが慌てて走って来たから……すぐにドアを閉めたと言っています……。その位置から目撃したのなら、角度がなく見た時間もわずか……どの部屋から出て来たかなんて元々判別しようがないんですよ……。
妹さんの部屋のドアが開いていて……ドアに付いたルームナンバーが見えない限りはね!」
光井さんが慌てていたのは、逸早くトイレに行きたかったから。
そして、その時ドアが開いていたということは、まだ妹さんは生きていて中にいたのだ。
「その旅館の部屋はオートロックじゃない……。妹さんが部屋の内側から鍵をかけていなかったのなら……あなたがわざわざ窓を割って部屋に入る必要はありませんから……。
もっとも、あなたが大声で妹さんの部屋のドアを叩いて、野次馬が集まっていた状況で……あなたの部屋から慌てて出て来て走り去った不審人物がいたのなら……他にもそれを見た客はいるでしょうしね……」
コナン君がそう言うと、爆弾男は「じゃあ誰なんだよ!?」と逆ギレした。
《妹の呟きによるといるはずだよなァ!?妹が眠くなるまで部屋に居座ってた殺人犯がよ!》
コナン君は静かに話した。
「あなた……妹さんのデビュー作……お読みになりましたか?」
《い、いや……俺は本が苦手でよ……読んだことはねーけど……》
それを聞いたコナン君はあらすじを語り出した。
「タイトルは『死神の葬列』……。
主人公の刑事が、追っても追ってもその影すら掴めない連続殺人鬼……。ある日刑事は枕元に立つ死神と出会い……『お前には一生捕まえることが出来ない』と告げられてしまう……。それもそのはず……その刑事こそが夜な夜な無意識のうちに街を徘徊し、殺人を繰り返していた殺人鬼の正体……。その事実に気づいてしまった刑事は、罪の意識に苛まれ……死神に誘われるまま自らの命を絶つことになる……」
《お、おい……まさか……》