第18章 3人の容疑者──bourbon
「だってー……気になって眠れないよ〜……」
「それに言い忘れたことがあってよ……」
「事件のことを聞きに言った時……町内会のほとんどの人が言ってました……。
2、3日前にも茶髪で迷彩服の男がボク達と同じことを聞きに来たって……」
「え?」
私と哀ちゃんは2人で目を丸くさせた。
「その人、ほんと写真を見せて聞いてたらしいですよ……『妹が書いたこのデビュー作の本を持ってうろついてた、この女連中を旅館で見なかったか』って……」
なるほど。聞き取り調査は済ませてあるということか。
コナン君が新一の声で話し始めた。
「どうやらあなたも色々調べたようですが……どこまで掴んでます?」
《ああ……。この3人のことならかなり嗅ぎ回ったぜ……。
印鑑職人の女房の二瓶純夏は神経質で、知らない客が散らかしたスリッパをいちいち揃えていたらしいから……割とズボラだった妹とは反りが合わなかったってことや……
パン屋で働いてる湯地志信は、しょっちゅう温泉に入ってて……ひょっとしたら妹の手首を切った時についた返り血を、風呂場で洗い流してたんじゃねーかってことや……
実家が石材店の光井珠実は……妹の部屋から本を手にして大慌てで出てくる所を……3つ隣の部屋の客に見られてたってこともな!》
そして彼は切羽詰まったような声で言った。
《オラ!早く教えろ!どいつなんだよ!?妹がネズミって名付けた殺人犯は!?》
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
──第三者side
蘭がだんだんと不安そうな顔をする。世良が蘭にひそっと耳打ちした。
「もしかして『新一、何でまだ解けないのよ!?』とか思ってる?」
「え?」
蘭はきょとんとして世良の方を見た。
「大丈夫!彼ならもう見抜いてるはずだよ……沢栗未紅さんを殺したネズミが……この光井珠実さんだってことはね……」
蘭は心の中で(ええぇ!?)と叫んでいた。世良が唇の前に指を立てる。
「それを口にしない理由はただ1つ……犯人が分かったら爆弾男はその犯人と心中してしまうから……」
そして世良は爆弾男をまっすぐ見据えた。
「どうやら犠牲者を2人出さないもう一つの方法をとるしかなさそうだね……。
もっとも、2人が1人になるだけだけど……」